[I-P1-7-06] 肝細胞癌を発症したFontan associated liver disease(FALD)28歳女性の臨床経過
キーワード:フォンタン, FALD, 肝細胞癌
【背景】単心室症例に対するFontan術後成績は向上している一方、遠隔期における多くの問題点が浮上している。Fontan循環の生理学的特徴である高い中心静脈圧 (CVP) が原因でうっ血肝に起因する肝障害がFontan associated liver disease (FALD) であり、肝線維化、肝硬変、限局性結節性過形成、肝細胞癌と報告も様々である。今回、若年で肝細胞癌を発症したFALD症例を経験したので報告する。【症例】28歳女性。日齢7で純型肺動脈閉鎖症と診断。生後4か月でBrock術+Blalock-Taussig shunt術、1歳10か月でGlenn術、4歳でFontan術(extracardiac TCPC)を施行。5歳時に体肺動脈側副血行へのcoil塞栓術を行っているが、その際のCVPは13mmHgであった。β遮断薬・抗凝固薬の内服を導入・継続し、心不全症状等なく経過したが、20歳頃よりAST、ALT、γGTPの上昇を認め、28歳時にPIVKA2、AFP高値を認めた。M2BPGiは正常値であったが、肝硬度測定検査では18.0kPaと高度であった。ウィルス性肝炎の既往や肥満、高脂血症は認めなかったが、精査入院にて2型糖尿病を指摘された。dynamic CT、超音波検査等の画像精査でS7区域の肝細胞癌と診断し、肝臓外科、麻酔科、小児科及び循環器内科で術中・周術期管理について検討の上、肝切除術を実施した。内科併診のもと今後も肝細胞癌の再発に注意し経過観察を行っていく方針である。【考察】循環器内科医のFontan循環に対する理解が漸く得られるようになった一方で、小児循環器科医のFALDへの理解は必ずしも深くない。小児期でもFontan術後に肝細胞癌を発症した報告はあり、腹部超音波検査等での定期的な画像診断とともに、AFPの観察などが必要である。