[I-P1-7-07] 成人期フォンタン循環における体血管抵抗低下と肝うっ血の関連
Keywords:フォンタン, 成人先天性心疾患, 肝機能障害
【背景】フォンタン術後遠隔期の約1/3に末梢血管抵抗(SVR)が低下し、駆出率・心拍出量が保たれる、小児期の循環特性と対象的な病態を示す症例がある。この病態がフォンタン関連肝障害の増悪因子となりうるという仮説を検証した。【対象と方法】成人フォンタン38例 (22.4±4.5歳)を対象に、術後10年以上経過したカテーテル検査を解析した。SVRが当科の成人期非フォンタン例のカテーテル検査時SVRの95%信頼区間を下回る症例を低SVR症例と定義し、正常SVR症例と肝循環特性、肝線維化指標、予後を比較した。【結果】低SVRは44%に認め、正常SVRと比較し性別、導管サイズ、血圧に差は無かった。低SVR症例の高い心拍出量(2.9±0.6, 2.0±0.4 L/min/m2, p<0.001)は大きい1回拍出量(41±5, 29±7 ml/m2, p=0.002)と低いQp/Qs (0.88±0.15, 0.99±0.07, p=0.020) に起因し、心拍数は差が無かった。低SVR症例では肺動脈圧、肺動脈楔入圧、肝静脈圧に差が無かったが、肝静脈楔入圧が高く(13.5±2.2, 11.8±1.5 mmHg, p=0.016)、うっ血肝を示唆した。肝静脈楔入圧と中心静脈圧は正相関し、低SVR症例の傾きは正常SVR症例と比較し急峻であり(p=0.042)、低SVR症例では中心静脈圧上昇に伴い肝静脈楔入圧が付加的に上昇することが示された。低SVR症例では上大静脈酸素飽和度 (71±6, 61±8 %, p=0.0006)が高い一方、下大静脈(66±8, 62±12 %)・肝静脈(55±16, 51±13 %)の酸素飽和度に差は無く、静脈血の下大静脈からの還流が困難な循環が示唆された。低SVR症例ではフォンタン関連臓器障害の頻度が高かった (p=0.036)。【結論】フォンタン術後遠隔期の低SVRは肝うっ血の増悪因子であり、フォンタン関連肝障害の悪循環を形成する可能性がある。