[I-P2-1-01] 小児ワルファリン使用患者におけるPT-INR高値を示す影響因子に関する検討
キーワード:warfarin, PT-INR, fontan
【背景】ワルファリン(warfarin: WF)は小児循環器領域において川崎病冠動脈瘤、人工弁置換後、フォンタン術後患者の血栓予防などの目的に使用される。WFは発熱、下痢、薬物相互作用、肝障害などの要因によってその作用が増強され、出血性有害事象のリスクを避けるためにPT-INR値のモニタリングは重要である。小児は成人と比較して安定したPT-INR値の維持が困難とされるが、その知見はまだ多くない。【目的】小児ワルファリン使用患者におけるPT-INR異常高値の影響因子を検討する。【方法】2020年1月から2021年12月の間に当院でWFの処方歴がある患者 63例(男33例、53%)を調査対象とした。WF導入時から調査日(2021年12月31日)までのPT-INR異常高値(PT-INR >4)をイベントとして抽出し、患者背景(年齢、性別、対象疾患)、イベント回数、イベント発生時の年齢、WF投与量、影響因子、対処法、および出血性合併症の有無などについて診療録から後方視的に調査し、解析した。【結果】対象の疾患内訳はフォンタン術後 51例(81%)、人工弁置換術後 11例(18%)、川崎病冠動脈瘤 1例だった。WF内服期間中央値 121か月(16-252か月)だった。イベントは23例(37%)、計40回認められた。発生年齢中央値 4歳(0-20歳)、うち75%(30回)は6歳以下で発生した。PT-INR最高値12.23 (4.02-12.23)だった。イベント時のWF投与量 0.09mg/kg(0.06-0.14mg/kg)だった。影響因子(重複あり)は感染症 15回(38%、肺炎 4、上気道炎 4、創部感染 2、胃腸炎(下痢・嘔吐) 1、その他 4)、発熱 7回(18%)、WF導入後1週間以内 6回(15%)、抗菌薬併用 6回(15%)、肝障害 2回(5%)であった。PT-INR異常高値に対してWF減量、休薬のほかにビタミンK投与は3回行われた。出血性有害事象は認められなかった。【結語】小児WF使用患者において、低年齢、WF導入直後、発熱、感染症時にPT-INRを慎重にモニタリングし、出血性合併症に注意する必要がある。