[I-P2-1-06] 高等学校運動部活動における心停止の原因心疾患に関する分析
キーワード:学校安全, 院外心停止, 突然死
【背景/目的】蘇生教育普及後における、高校生の運動部活動(以下「部活」)中の心停止について、原因疾患による分析を行い発症予防に有益な情報をえる。【方法】独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)より、2009年から2018年に本邦で高校部活中に発生した非外傷性心停止55件の競技、原因疾患、AED使用状況、事故報告を取得した。原因疾患が不明な例で、AED通電が行われた例は特発性心室細動(VF)とし、通電されなかった例は原因不明とした。原因疾患別に蘇生率をchi-square検定で比較した。【結果】推定原因疾患別にみた蘇生成功例数(計25):死亡例数(計30)は、 VF 18:13、肥大型心筋症 4:3、拡張型心筋症 1:0、Brugada症候群 1:0、冠動脈奇形・起始異常 1:2、大動脈解離 0:3、ファロー四徴 0:1、劇症型心筋炎 0:1、原因不明 0:7であった。VFでは有意に蘇生成功例が多く(p=0.033)、原因不明例は有意に死亡(突然死)例に多かった(p=0.010)。他疾患に有意差はなかった。推定原因疾患と運動種目の関係では、肥大型心筋症の死亡例では3例すべて野球部活のトレーニング中であった。VFからの蘇生例18例中10例で事後にICDの植え込みが行われていた。【考察】蘇生教育が普及した10年間における高校部活での院外心停止や突然死は、70%以上が発症前に予測されていないと考えられ、半数以上が特発性心室細動であった。先天性心疾患例の突然死はファロー四徴の1例のみで、QT延長症候群、WPW症候群の心停止例はなかった。心筋症、先天性冠動脈異常と大動脈解離は蘇生困難例があり早期発見が望まれる。VFで蘇生不成功例や、原因疾患不明例は、搬送先病院での精査内容の把握によって対応策が講じられる可能性がある。今後、体育授業での発症例や、中・小学校、就学前事例の分析が望まれる。