[I-P2-1-09] 肥満進行により心肥大所見が過小評価される可能がある。 -学校心臓検診での縦断的評価の意義-
キーワード:学校心臓検診, 心肥大, 肥満
【目的】体表面心電図は体格の影響を受けるが、小児の知見は限られ、縦断的評価の報告はない。我々は南魚沼市と共同で、検診情報を統合したデータ管理システムを構築し、縦断的評価を可能にした。このデータベースを用い、体格が12誘導心電図の心肥大所見に与える影響を検討したので報告する。【方法】2018年に南魚沼市立小学校に在校の小1計474名(男 232名、女 242名)中、研究参加に同意し、心疾患既往なく、小1、小4で良好に心電図記録が取得でき、不整脈のなかった計446名(男 214名、女 232名)が対象。 体格指標として小1と小4の身長、体重、肥満度とその小1から小4の変化値(d)を、心肥大指標である、自動計測のII、III、aVF、V1、V5、V6のR波高、V6のS波高、SV1+ RV5、SV1+RV6の波高、QRS電気軸の小1と小4の値とそのdを評価項目として、体格と心肥大指標の関連を男女別にSpearmanの相関検定で検討した。【結果】小1,小4時の体格と心肥大指標に有意な相関なし。しかし男ではd体重とdR V5波高、d(SV1+ RV5)、d電気軸が負相関(ρ=-0.221, p=0.001; ρ=-0.253 ,p<0.001; ρ=-0.208 ,p<0.01)し、d肥満度とdaVF R波高、d(SV1+ RV5)、d(SV1+RV6)が負相関(ρ=-0.220,p=0.001; ρ=-0.249 ,p<0.001; ρ=-0.246 ,p<0.001)した。女ではd体重とdRV5波高、d(SV1+ RV5)、d(SV1+RV6)が負相関(ρ=-0.208, p=0.001; ρ=-0.326 ,p<0.001; ρ=-0.201 ,p<0.01)し、d肥満度とdRIII波高、d電気軸が負相関(ρ=-0.276,p<0.001; ρ=-0.241, p<0.001)した。【結論】横断的評価では肥満度と心肥大指標の相関はないが、縦断的評価で肥満度上昇により、心肥大指標となる波高が低下した。肥満進行で心肥大所見が過小評価される可能性が示唆され、これを考慮した縦断的評価が心肥大の精度向上につながるかもしれない。