[I-P2-2-04] 心室瘤・憩室と心内形態異常を合併した完全型心臓脱の新生児症例
キーワード:完全型心臓脱, 心室瘤, 心内形態異常
【背景】心臓が皮膚に覆われず体外に直接露出している完全型心臓脱は極めて稀な疾患で、心内形態異常を合併した場合には非常に予後不良である。症例数が少ないこともあり合併奇形に伴う治療戦略はまだ定まっていない。今回、心内形態異常だけでなく心室瘤・憩室も合併した完全型心臓脱症例を経験したので報告する。【症例】胎児期から完全型心臓脱・心内形態異常・心室瘤・憩室の指摘があった。妊娠38週、帝王切開により体重2600 g台で出生した。生後、完全型心臓脱(胸骨下部で3 cm四方の皮膚欠損), 左心室瘤・憩室, 左室低形成, 両大血管右室起始症, 肺動脈弁狭窄症, 動脈管開存症と診断した。血行動態としては単心室循環としての治療戦略を、完全型心臓脱に対しては保存的に心臓脱部位の上皮化を待つ方針、心臓脱部位の大部分を占める心室瘤・憩室はいずれかの時期に切除し、心臓脱の還納・閉胸を目指す方針とした。その後、肺血流増加が症候化したため日齢29に肺動脈絞扼術・動脈管閉鎖術を、心臓脱・心室瘤部位に影響しないように側開胸で施行した。その後、左肺動脈狭窄を認めたため、将来のGlenn, Fontan手術を鑑み左肺動脈狭窄解除術を日齢56に施行することとした。良好な手術視野を確保するために正中切開を選択した。心臓脱を合併しており術後に閉胸が難しくなるおそれ、癒着により次回以降の手術操作が困難になるおそれなどから、左心室瘤・憩室切除も合わせて行うこととした。しかしながら瘤・憩室切除により心臓形態が変化した影響と思われる重度三尖弁逆流が術後に出現、逆流コントロールができず日齢101に死亡した。【考察】心室瘤・憩室が心臓脱部位の大部分を占めており、心筋切除により心臓を皮下へ還納可能になると期待されたが、心筋切除が心臓形態に与える変化が予想外に大きかった。新生児期・乳児期早期には心室瘤切除を行わず、慎重に経過観察するという保存的戦略も考慮される。