[I-P2-2-06] 左冠動脈肺動脈起始症を合併した左心低形成症候群の一例
キーワード:左心低形成症候群, 冠動脈起始異常, 大動脈再建術
【背景】左心低形成症候群(Hypoplastic left heart syndrome:HLHS)に左冠動脈肺動脈起始症(Anomalous origin of the left coronary artery from the pulmonary artery:ALCAPA)を合併することは稀で,数例の生存報告があるのみで予後不良である.今回,同症例に対して,PDAステント留置し,Norwood手術(+冠動脈移植)を避け,両方向Glenn(BDG)手術を行い,生存例を得たので文献的考察を加えて報告する.【症例】6か月女児.胎児期および出生後の心臓超音波検査でHLHS(大動脈弁閉鎖、僧帽弁閉鎖)と診断.日齢4に両側肺動脈絞扼術を施行。日齢14に造影CTでALCAPAが明らかになった.過去HLHSにALCAPAを合併した症例の報告が10例あるが,6例が術中の心筋虚血が原因で死亡していた.大動脈再建,冠動脈移植に伴う心筋虚血を懸念し,Norwood手術は見合わせ,生後2か月の肺動脈絞扼調整手術を経て,生後6か月で経皮的動脈管ステント留置術,BDG手術を行った.生後8か月で,PDAステント前後で圧較差の増大と三尖弁逆流増加に伴う心不全増悪を認め,ステント内バルーン拡張術を行い,Fontan手術待機中である.【まとめ】HLHSにALCAPAを合併することは稀であるが,適切な手術計画を可能にするため,術前診断が重要である.本症例では,疾患の課題である大動脈再建・冠動脈移植による合併症を回避し,BDG手術まで進む術式の選択が可能であった.