[I-P2-3-01] 先天性完全房室ブロックに対するペースメーカー植え込み術の適応時期について
キーワード:cCAVB, 胎児心エコー, pacemaker
【背景】先天性完全房室ブロック(cCAVB)のペースメーカー(PM)適応は、出生後の心拍応答と心不全の有無により判断するが、至適な時期の判断には難渋することがある。今回、生後早期にペースメーカーを留置した症例の循環特性を解析した。【症例1】在胎16週時にcCAVBと診断された。心室レートは、53/分前後で胎児水腫なく経過し、在胎37週で帝王切開にて出生した。生後心拍数は不変であったが、1回心拍出量と血圧にて血行動態シミュレーションを行い、生後の新生児の適応を考慮すると肺うっ血は不可避と判断し、同日緊急で一時的PM留置術を施行した。日齢1に血圧上昇と左室駆出率低下を呈し後負荷不整合と判断したが、血管拡張薬で管理し得た。【症例2】在胎39週時、胎児徐脈、心拡大、胸腹水を主訴に紹介となり、同日緊急帝王切開にて出生した。胎児期の心室レートは55~94/分と変動していたが、生後は132/分に上昇した。しかし、再度急速に房室ブロックが進行し、生後10時間で心室レートは40台/分に低下し、完全房室ブロックと診断した。循環不全に陥ったため、緊急で一時的PM留置術を施行した。母体の抗SS-Aが陽性であり、心筋炎の合併が示唆された。【考察】症例1では、後負荷上昇前にPMを留置できたが、症例2は循環不全となり緊急でのPM留置を要した。出生後には左室容量負荷と後負荷は増大し、左室心拍出量は胎児期の約3倍に至る。cCAVBにより心拍数増加が見込めない場合には、拡張障害のある新生児心筋で1回拍出量を増加しその増加を賄う必要がある。生後のこの変化に適応不能なcCAVB例では、早期のPM留置が望ましい。【結論】胎児cCAVBでは、心拍数のみではなく、胎外循環への適応も加味した心機能評価を行い、PM留置の至適時期を判断する必要がある。