第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

胎児心臓病学

ポスター発表(I-P2-3)
胎児心臓病学 II

2022年7月21日(木) 15:10 〜 16:10 ポスター会場

座長:黒嵜 健一(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)
座長:与田 仁志(東邦大学医学部 新生児科)

[I-P2-3-02] 出生後の治療差し控えを検討した純型肺動脈閉鎖症

原田 雅子, 山下 尚人, 高村 一成 (宮崎大学 医学部 医学科 発達泌尿生殖医学講座 小児科学分野)

キーワード:PAIVS, 治療差し控え, 胎児診断

【背景】胎児診断された心疾患の出生後の治療差し控えは、重篤な染色体異常や左心低形成症候群類縁疾患で多く議論されている。純型肺動脈閉鎖症(PAIVS)、軟骨無形成症(ACH)と胎児診断され、治療差し控えを検討した症例を経験したので報告する。【症例】妊娠34週に胎児心エコー、胎児CTでPAIVS, ACHと診断。羊水検査で染色体異常はなかった。ACHは低身長は呈するが知的予後、生命予後は良好であり、PAIVSが本児の予後に寄与すると考えられた。しかし両親よりプロスタグランジン製剤(PGE)投与を含む全ての治療差し控えの希望あり。小児循環器医としてはこれを容認できず、病院倫理部や臨床心理士を含めた多職種カンファレンスを繰り返したが、最終的に治療差し控えは許容され得るとの結論に至った。満期産で出生後も保護者を説得し続けたが叶わなかった。児は無治療でも動脈管は狭小化しただけで完全閉鎖することなく、哺乳は良好でチアノーゼ以外に治療を要する所見はなかった。産科病棟で母児同室を経て日齢6に自宅退院された。【考察】(1)保護者が治療差し控えを希望する理由、(2)PGE投与とその後の手術の差し控えは医療ネグレクトに当たるか、(3)手術を前提としないPGE投与は標準治療か、という点が論点であった。すべての新生児は適切な医療を受ける権利がある一方、それを担保するのは保護者である。さらに、もし医療ネグレクトと判断された場合は、当県に病児対応できる児童福祉サービスがないため当院で年単位の入院生活を送ることになる。保護者は児に対する十分な愛情があると判断されたこと、家族背景、障害児に不寛容な特殊な地域性、当院小児科医の中でも意見が分かれたこと、当該児童相談所は医療ネグレクトには当たらないとしたことなどから上記結論に至った。【結論】胎児診断症例の治療差し控えについては、疾患の重症度だけではなく症例毎に多職種で方針を検討される必要がある。