The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ポスター発表

胎児心臓病学

ポスター発表(I-P2-3)
胎児心臓病学 II

Thu. Jul 21, 2022 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場

座長:黒嵜 健一(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)
座長:与田 仁志(東邦大学医学部 新生児科)

[I-P2-3-07] 胎児心不全徴候が進行し、在胎34週で娩出した胎児動脈管早期収縮の1例

鈴木 康太, 山口 翔, 藤井 隆, 高橋 辰徳, 安孫子 雅之 (山形大学 医学部 小児科)

Keywords:胎児動脈管早期収縮, 拡張障害, 胎児心不全

【背景】胎児動脈管早期収縮 (PCDA)は胎児水腫や子宮内胎児死亡の原因となる。また、出生後は新生児遷延性肺高血圧が問題となり、診断後は一般的に早期娩出が勧められる。しかし、妊娠37週以前、特に30週前半の診断例における娩出方針について定まった見解はない。
【症例】母体は30歳、初産。NSAIDs服用歴や健康食品の摂取歴なし。妊娠33週2日にPCDAの疑いで当院紹介された。胎児エコーで右心系の拡大と右室心筋肥厚、右室収縮不全、および軽度三尖弁逆流を認め、動脈管は肺動脈から大動脈方向の連続性血流で最高血流速度2.9 m/sと加速していた。その他心奇形は認めず、PCDAと診断した。入院し母体ステロイド投与の上で経過観察を行ったところ、右心系の拡大と右室収縮不全、および三尖弁逆流の経時的な進行を認めたため、緊急帝王切開の方針とした。児は在胎34週0日、体重2,446g、Apgar score 8/9で出生した。経胸壁エコーで、右室心筋は著明に肥厚し収縮不全を呈し、三尖弁逆流は高度だった。体血圧と同程度の肺高血圧を認め、動脈管は左右短絡優位の両方向性短絡で、卵円孔は右左短絡優位の両方向性短絡だった。呼吸状態は安定しており、保育器内酸素投与で酸素飽和度が100%に上昇したため、投薬や補助換気を必要としなかった。その後、肺高血圧や三尖弁逆流は速やかに改善し右室収縮能も正常化したが、右室肥大および右室E/Eaの高値は遷延し拡張障害が示唆された。卵円孔の右左短絡が持続したため、在宅酸素療法を導入し日齢25に退院した。生後1か月時点で発育は問題ないものの、酸素中止により卵円孔の右左短絡が顕在化するため、在宅酸素療法を継続中である。
【考察】出生後に酸素投与のみで回復した軽症PCDAでも右室の拡張障害は遷延しており、娩出時期を遅らせることで重症化した可能性が高い。特に妊娠30週前半の診断例では、綿密な胎児フォローによる心不全徴候の早期検出が娩出時期の決定に重要である。