[I-P2-6-05] 抗菌薬のみで治療可能であった心房中隔欠損デバイス閉鎖後感染性心内膜炎の一例
Keywords:心房中隔欠損症, デバイス閉鎖, 感染性心内膜炎
【背景】二次孔心房中隔欠損(ASD)のデバイス閉鎖後に稀な合併症として感染性心内膜炎(IE)があるが、多くの症例では外科的疣贅切除とデバイス除去・ASDパッチ閉鎖が施行されている。今回、抗菌薬のみで治療したASDデバイス閉鎖後のIE症例を経験した。【症例】7歳、女児。3歳時に心雑音でASDと診断された。経食道心エコー図でASDは17mmと3.9mmの2孔が上下に並ぶ形態で、大動脈縁は2mmと短かった。6歳時にFigulla Flex2(FF2)24mmをValsalva側をflared&straddling shapeに留置して、2孔とも1デバイスで閉鎖した。閉鎖後は抗血小板を内服し、抗菌薬は投与していない。治療1か月後に4日間続く発熱で当院受診した。炎症反応高値と経胸壁心臓エコー図で三尖弁中隔尖に付着するmm大の疣贅を認めた。感染性心内膜炎と診断し、抗菌薬治療(バンコマイシン+セフォタキシム)を開始した。血液培養でペニシリン感受性肺炎球菌が検出され、抗菌薬をビクシリンとゲンタマイシンへ変更した。治療翌日に血液培養は陰性化し、解熱した。治療5週間で疣贅は消失し、6週間の抗菌薬治療後に合併症なく退院した。【考察】ASDデバイス閉鎖後のIEは0-2%で、デバイスが内皮化される前の6か月以内に多いと報告されている。また、Amplazter deviceでは左房disk側に疣贅が形成される頻度が高く、頭蓋内などに塞栓を合併するため、外科的なデバイスおよび疣贅除去とASD閉鎖が行われている。術後に房室ブロックや神経学的合併症を呈する症例も少なくない。本症例では大きいサイズのFF2を選択し、右房disk edgeが三尖弁中隔尖に間欠的に接触していた場所に疣贅付着を認めており、その部位の内膜損傷が基盤にあったと推測される。デバイスが弁などに当たる様に接触している場合は、IEのリスクが高くなる可能性がある。また、右心系のみの疣贅の場合は、全身塞栓のリスクが低いので、抗菌薬のみの治療も一選択肢と思われる。