[I-P2-6-06] 経頭蓋超音波ドプラとコントラスト心エコーが診断・治療後評価に有用であった多孔性心房間短絡による奇異性脳塞栓症の1例
キーワード:奇異性塞栓, カテーテル治療, コントラストエコー
【背景】脳梗塞の原因として、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞が大部分を占めるが、原因不明の潜因性脳梗塞(cryptogenic stroke)が約25%存在する。これらの大部分は塞栓性の脳梗塞でありESUS(塞栓源不明の脳塞栓症)と呼ばれ、精査により卵円孔開存と同部位の右左短絡が原因として同定されれば、二次予防としてカテーテル治療が推奨される。【症例】生来健康な14歳男児。ボーリング中にめまい、吐気、ふらつきが出現し、頭部MRI検査で左後下小脳動脈の脳梗塞と診断された。経胸壁心エコーでは心内短絡は検出されなかったが、バルサルバ負荷時の経食道心エコーとコントラストエコーで、卵円孔を介する右左シャントが確認された。下肢静脈エコーで深部静脈血栓は認めなかったが、ホルター心電図で心房細動がなく、頚部血管に動脈硬化・解離を認めず、血液検査上も血栓素因は認められないことから、Brain-Heartチームで協議の上、卵円孔開存に伴う奇異性脳塞栓症と判断し、カテーテルによる卵円孔閉鎖の方針とした。治療の際、卵円窩中心部をガイドワイヤーが通過し、本来の卵円孔以外に短絡があることが判明した。同部位に閉鎖栓を留置する方針としたが、25mmでは短絡を完全に覆うことは困難と判断し30mmの閉鎖栓を留置した。閉鎖後のコントラストエコーで右左短絡が残存し、閉鎖栓下縁に短絡が出現していた。閉鎖栓を35mmにサイズアップし、残存短絡の減少を確認し治療を完了した。現在、外来フォロー中であるが、経頭蓋超音波ドプラで右左短絡は大幅に減少している。【まとめ】卵円孔開存による奇異性塞栓に対するカテーテル治療において、右左短絡部位を正確に検出し閉鎖する必要がある。経頭蓋超音波ドプラとコントラスト心エコーは、診断のみならず術中の治療評価および治療後効果判定に有用である。