第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

染色体異常・遺伝子異常

ポスター発表(I-P2-7)
染色体異常・遺伝子異常 II

2022年7月21日(木) 15:10 〜 16:10 ポスター会場

座長:栗嶋 クララ(厚生労働省)
座長:永井 礼子(北海道大学病院 小児科)

[I-P2-7-01] HFpEFの急性肺水腫を呈したMyhre症候群の小児例

岩本 洋一1, 石戸 博隆1, 増谷 聡1, 先崎 秀明2 (1.埼玉医科大学総合医療センタ総合周産期母子医療センター小児循環器部門, 2.桃太郎クリニック)

キーワード:Myhre syndrome, HFpEF, acute pulmonary edema

【背景】Myhre症候群は、SMAD4遺伝子の変異により、多系統結合組織障害等を呈する稀な疾患である。駆出率の保たれた心不全(HFpEF)は小児期にも存在するが、典型的な急性肺水腫の報告は見当たらない。HFpEFに伴う典型的な急性肺水腫を呈したMyhre症候群の小児例を報告する。
【症例】Myhre症候群の18歳女子。在胎35週3日、体重1652gで出生し、大動脈縮窄(CoA)/動脈管開存(PDA)に対し、coarctectomy, PDA divisionが行われ、CoA再狭窄にはバルーン拡大術、パッチ拡大術(5カ月時)を施行した。β遮断薬とARBを服用し、血圧上下肢差や高血圧はなく経過していた。18歳時、尿量減少・約3kgの体重増加・腹部膨満・下腿浮腫・呼吸苦を呈し、受診した。心拍数122/分、呼吸数23/分、血圧110/59mmHg、SpO2:88%(room air)であり、胸部X線では著明な肺うっ血・胸腹水・心拡大を認めたが、心エコ―での左室駆出率は84%であった。e’ 12.2 cm/s, E/e’ septum 10.0, 血液検査でAlb 4.3 g/dL, BNP 56.5 pg/mLであり、末梢静脈圧から推定する中心静脈圧は20 mmHgと著明な高値であった。入院後、利尿薬の静注に速やかに反応し、症状・所見は経時的に改善し、利尿薬内服に移行した。心臓CTでは、心膜の石灰化や肥厚を認めず、大動脈縮窄部位の再狭窄も否定的であり、HFpEFの急性増悪と診断した。その後は浮腫を認めずに経過している。
【考察】本症例はHFpEFに伴う典型的な肺水腫を来した。Myhre症候群では皮膚硬化を示すことが知られているが、本疾患と心拡張不全との関連を明らかにするためには、今後の症例集積が必要である。心臓カテーテル検査結果を交え、報告予定である。