[I-P2-7-07] ELN遺伝子異常変異の一例
キーワード:SVAS, ELN, 右室流出路狭窄
【背景】大動脈弁上狭窄(SVAS)および末梢性肺動脈狭窄(PPS)を合併する心疾患としてWilliams症候群真っ先に疑われる。しかし、特徴的な顔貌を伴わないSVASおよびPPSの症例が存在し、遺伝子検索の技術的進歩や知見の蓄積により、ELN遺伝子異常がその原因と診断されるようになってきている。【症例】在胎38w4d、正常経腟分娩にて出生。妊娠後期に胎児APC指摘有り。胎児エコーでは診断に至らず、経過観察となっていた。家族歴特記すべきことなし。出生後、心雑音指摘され小児科医により心エコーされ、PPSの診断で定期的なエコー検査フォローを施行されていた。生後3か月時に小児循環器外来でのエコー施行されたところ、SVAS及びPPS認められ、心臓カテーテル検査施行される事となった。圧格差20mmHgのSVAS, 肺動脈末梢から弁上まで圧格差58mmHgの PPS, 右室流出路での圧格差が20mmHgのRVOTSを認めた。冠動脈出口部の狭窄は認められなかった。下行大動脈より右肺への側副血行路が認められた。elfin様顔貌認めなかったが、FISH法施行し、7q11.23の微細欠失を認めなかった。ELN遺伝子異常を疑い、ELN遺伝子の遺伝子変異検索し、既知の報告ではなく、新規de novo変異が認められた。経過観察中、右室圧の上昇が徐々に進行している印象があり、1歳6か月時に造影CTによるangiographyにより評価を行った。大動脈から新たな側副血行路の出現はなく、右肺への側副血行路の拡張や増大は認めなかった。PPSの増悪は無いようであったが、画像評価にて右室流出路漏斗部の心筋肥大が進行していた。【考察】ELN異常症ではSVASの進行が手術介入の適応であると言われている。PPSの自然軽快は従来言われているように期待できるものであり、PPSに対して手術介入などは控えるべきであると考えるが、このようにRVOTSが進行する症例も認められる。遺伝学的な観点に立った、ELN異常症の表現型に関する知見の蓄積が必要である。