[I-P3-1-03] Fontan術後遠隔期に発症した急性心筋梗塞を伴う急性大動脈解離に対して行なった集学的治療の一例
キーワード:Fontan, 急性大動脈解離, 急性心筋梗塞
【背景】先天性心疾患患者が遠隔期に大動脈基部拡大を発症する事は良く知られているが、基部拡大に伴う破裂や大動脈解離のリスクに言及された文献は少ない。それゆえ、先天性心疾患術後の患者が増えている昨今でも、大動脈基部拡大に対する標準的な治療方針は明確に確立されていない。【症例】36歳男性。三尖弁閉鎖に対して、4ヶ月時に左Blalock-Taussig shunt術、6歳で右Blalock-Taussig shunt術、7歳でAPC-Fontan手術の手術歴がある。33歳時にpulseless VTにて心肺停止したが神経学的後遺症なく救命され、AICDの適応と考えられていた。同時に大動脈基部拡大 (52mm)を指摘されていたが本人がフォローCTに来院せず通院も限局的だった。2日間続く胸痛を主訴に救急外来受診し、心電図上ST上昇と心筋逸脱酵素上昇を指摘。血管造影にて左冠動脈前下行枝の100%閉塞と偽腔が上行大動脈に限局したStanford A型大動脈解離、高度大動脈弁閉鎖不全と診断された。まず循環器内科にて冠動脈閉塞に対して緊急PCI(ステント留置)施行し、即座に心臓血管外科(先天性グループおよび後天性グループ合同)により大動脈弁置換を伴う基部置換、上行大動脈置換術とAICD植込み術を行なった。術後21日目に独歩で退院し、循環器小児科外来にて心不全管理・不整脈管理を行っている。術後CTでは人工血管と左冠動脈の血流は良好であった。急性心筋梗塞を伴う左冠動脈閉塞に対して緊急PCIを行う事で患者を安定させ、また逆行性心筋保護液投与がしばしば困難なFontan手術後患者に対して良好な順行性心筋保護液を行うことができた。Fontan術後の大動脈基部拡大に対して予防的手術は積極的に推奨されていないが、成人先天性心疾患患者の増加をうけて大動脈解離や大動脈瘤破裂の症例は増えることが予想され、本症例のような集学的な治療が必要になると思われる。