[I-P3-1-04] 出生直後に低心機能・肺高血圧症を伴う甲状腺中毒症を発症した新生児Basedow病の1例
キーワード:新生児Basedow病, 心不全, 肺高血圧
【症例】母体はBasedow病に対しアイソトープ治療後でTSH刺激性レセプター抗体TSAb 4876%と異常高値のまま自然妊娠。妊娠25週頃よりFHR 190前後の胎児頻拍とCTAR40%の胎児心拡大、中等度TR、甲状腺腫大を認めMMIの母体投与を開始。その後FHR 170台で推移し心拡大やTRは著変なかったが胎児心機能障害や胎児水腫なし。34週0日に切迫早産のため緊急帝王切開で仮死なく出生。出生後よりHR 240の頻拍と呻吟、低酸素血症を認め挿管管理。心エコー図検査でEF 20%台の収縮障害と著明な右心系拡大、動脈管及び卵円孔の右左短絡などの肺高血圧所見あり。長期の頻拍および容量負荷による潜在的な心室障害に加えHt 70%台の多血症や後負荷不整合による低心機能と判断しミルリノン、ニトログリセリン、NO吸入療法、部分交換輸血などを施行し、甲状腺中毒症に対してはMMIと無機ヨードの注腸、免疫グロブリン静注療法を施行。日齢1には左室収縮は改善、肺高血圧所見も経時的に改善し循環作動薬やNO吸入療法は日齢3までに漸減中止。出生時の児のTSAb 5059%と異常高値で、母体MMIの胎盤移行が消失した日齢5の時点でFT4 8.4ng/mL、FT3 7.49pg/mLと甲状腺ホルモンは著明に上昇。心機能の改善とともにβ遮断薬内服を導入し、甲状腺ホルモン値の安定に時間を要したものの生後2か月で自宅退院。【考察】新生児Basedow病の死亡率は12-20%との報告もあり胎児頻脈や心不全を呈した際に母体MMI投与が必要となる。甲状腺機能亢進症と肺高血圧が関連する報告はあるが、心不全は通常高拍出性心不全であり本症例の様な低拍出性心不全の報告は少ない。本症例はFHRを指標に母体治療を行ったが、結果的に十分な症状コントロールができておらず出生後に循環破綻を来した事から、より強固な母体治療が必要だった可能性がある。新生児Basedow病は頻度1%と稀だが、母体TSAb>400%がリスクとされ高リスク母体は綿密なスクリーニングと高度の治療が必要だと考える。