[I-P3-2-02] メキシレチンとフレカイニドを併用したQT延長症候群3型の一例
キーワード:QT延長症候群, SCN5A, フレカイニド
【緒言】先天性QT延長症候群(LQTS)はQT時間の延長とTorsa de Pointes(TdP)と称される多形性心室頻拍により突然死の原因となる疾患である.サブタイプの1つであるLQT3では心筋Na+チャネルをコードするSCN5A遺伝子変異により活動電位プラトー相で流れるlate Na+電流(INal)が増強する. LQT3ではINal遮断作用を有するIb群の抗不整脈薬がQT時間を短縮させることが知られており本邦ではメキシレチンの内服が第一選択である.一方でフレカイニドやラノラジンが有効とする報告もある.メキシレチンの投与のみでは管理できず,フレカイニド併用を要したLQT3の1例を経験したので報告する.【症例】18歳女性.胎児期より不整脈を指摘されていた.生直後に多源性PVCおよび,QTc=500msと延長を認め,メキシレチンの投与が開始された.その後3歳でSCN5Aの遺伝子変異を認め,5歳でICD植込術が実施された.β遮断薬と多量のメキシレチン内服にも関わらず18歳より月に数回の心室性不整脈によるICD作動を認めた.メキシレチンよる手指振戦があり,フレカイニド内服を併用した.フレカイニド開始後QT時間の短縮は限定的であったがT波高は増高し,ブルガダ型ST上昇は認めなかった.以後心室性不整脈は完全に抑制された.【考察】LQT3の治療としてメキシレチンからフレカイニドへ変更した既報はあるが,二剤を併用した報告はなかった.相互作用により各薬剤の血中濃度が高値となりうることが予想される.管理不能なLQT3症例では複数のNa遮断薬が有効かもしれない.