[I-P3-2-07] QT延長症候群の遺伝子検査に基づく診療状況
キーワード:QT延長症候群, 遺伝子変異, 失神
【背景・目的】QT延長症候群(LQTS)は遺伝子診断が進み、遺伝情報に基づくテーラーメード医療が可能となりつつある。埼玉県立小児医療センターにおけるLQTSの遺伝子検査の状況、それに基づく診療状況を検討した。【対象・方法】埼玉県立小児医療センターで2004年以降にLQTSに対して遺伝子検査を行った54probands, 52家系について診療録より後方視的に検討した。検討項目は、遺伝子変異・失神歴・内服状況・最大QT時間、とした。遺伝子検査は、複数回の診療でのQTcF時間・家族歴・失神歴・運動時のQT短縮・T波形態などから、総合的に判断し、家族の同意のうえ実施した。遺伝子検査は、滋賀医科大学に依頼した。【結果】遺伝子変異は46probands(85%), 44家系で認めた。内訳は単独の変異がLQT1 18例、LQT2 9例、LQT3 4例で、複数か所の変異が13例、CPVT, ARVCの変異がそれぞれ1名であった。複数か所の変異は、同一遺伝子内2例・2遺伝4例・3遺伝子1例・LQTS+CPVT/ARVC6例、であった。失神は11例で認め、内服後に失神を認めたのはLQT2 5例とLQT1 2例(同一家系)であった。3遺伝子変異の1例で失神を認めたが内服後の失神は無く、他の複数か所の変異では失神を認めなかった。死亡例・ICD植え込み例は無かった。遺伝子変異のある症例では原則的に内服をし、変異が同定されなかった3例でも内服をしていた(1例は中止)。経過の中で最大のQTcF時間は殆どの症例で0.50を超え、変異が同定されなかった8例中7例でも0.50を超えていた。【考案】同一施設内で同一基準で遺伝子検査を行い85%の症例で遺伝子変異が同定された。遺伝子検査は内服内容の決定に有効であり、家族の説明にも有用であった。一方、明らかにQTが長い症例でも遺伝子変異が同定されない場合もあり、臨床所見と併せての診療が重要である