[I-P3-2-08] 意識消失を契機に脳波異常を指摘されたQT延長症候群2型の1例
Keywords:QT延長症候群, てんかん, 脳波異常
QT延長症候群(LQTS)とてんかんは合併することが知られているが、実際の管理の報告は限られている。今回我々は意識消失を契機に脳波異常を指摘されたLQTSの1例を経験したので報告する。症例は17歳男性。家族歴として父もQT延長の指摘を受けている。6歳時の学校心臓検診でQT延長を指摘され、9歳時の遺伝子検査でHERG R1033fs+22X (c.3099delG) の変異を認めた。QT延長症候群2型と診断され、βブロッカーの内服が開始された。今まで心イベントの既往はなく、運動制限は行わずに経過観察されていた。17歳時に学校で昼食中にけいれんを伴う意識消失が出現した。QT延長症候群2型の心イベントの誘因として典型的な情動ストレスや音刺激はなかった。自動体外式除細動器は準備されたが、呼吸ありと判断されたため、装着されなかった。救急隊到着時の心電図では洞リズムで、呼びかけに開眼したが、適切な返答はなかった。意識消失の原因として、心原性、神経原性どちらの可能性も考えられた。LQTSについては治療が不十分な可能性があるため追加治療を検討された。メキシレチン負荷試験で、QTcBが549msecから439msecに短縮したため、βブロッカーに追加してメキシレチンの内服を開始された。さらに神経疾患の鑑別のため神経内科を紹介され、脳波検査で棘波を認めた。しかし初回のけいれんのため抗てんかん薬は投与されず、定期的に脳波検査をうけ、経過観察された。LQTSは心筋活動電位に関連したイオンチャネルをコードする遺伝子異常が主な原因である。一方、特発性てんかんの原因としても様々なイオンチャネルの遺伝子変異が報告されている。両者はいずれもチャネロパチーと言え、合併することがある。特にけいれんを伴う意識消失発作の原因検索では両者の鑑別が必要である。さらにLQTSとてんかんの合併例では、神経専門医と連携をとり、両者を念頭に置いた管理が必要である。