第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

電気生理学・不整脈

ポスター発表(I-P3-2)
電気生理学・不整脈 I

2022年7月21日(木) 16:20 〜 17:20 ポスター会場

座長:髙室 基樹(北海道立子ども総合医療・療育センター 小児循環器内科)
座長:安田 東始哲(やすだクリニック小児科・内科 小児科)

[I-P3-2-12] 学校心臓検診でQ T延長症候群が疑われ確定診断に至った3例

藤村 友美 (国立成育医療研究センター 循環器科)

キーワード:QT延長症候群, 学校心臓検診, 遺伝子検査

【背景】Q T延長症候群(LQTS)は突然死に至る致死的不整脈を発症する遺伝性不整脈の一つである。学校心臓検診でLQTSが疑われ、家族歴や失神歴がなく、経過中に診断が確定した3例を経験した。それぞれの経過と問題点を考察する。【症例1】6歳女児。家族歴なし。安静時補正QT時間(QTc)は0.490秒、Schwartzの基準は4点でLQTSが強く疑われた。家族に説明して遺伝子検査を施行し、KCNQ1遺伝子にミスセンス変異を認めた。ナドロールの内服を開始し、水泳のみ禁止した。【症例2】6歳女児。安静時QTcは 0.436秒 、Schwartzの基準は2.5点、運動負荷試験や顔面冷水試験では陽性所見は認めなかった。潜水や飛び込みを禁止して経過観察した。11歳で起床後の失神が出現した。遺伝子検査を施行しKCN2変異を認めた。自宅や学校にAEDを用意した。本人は運動部入部を強く希望しており、外来で相談中である。【症例3】9歳女子。安静時QTc は0.470秒、 Schwartzの基準は2.5点、運動負荷、顔面冷水浸水試験はともに陰性。数年に1回痙攣のエピソードがあったが、脳波異常がありLQTSの診断は確定しなかった。13歳時に痙攣の回数が増え、神経内科での遺伝子検査でKCHN2変異を認めLQTSと診断した。プロプラノロール内服を開始するも、ふらつき等が強く最終的にナドロールへ変更した。【考察】家族歴、症状がなく、学校心臓検診でQT延長を認めた症例のフォローは難しい。Schwartzの基準や運動負荷、顔面冷水浸水試験等でも陽性を示さない症例も多く存在する。学校での運動制限も、本人や家族に自覚がないため説明に困難を伴うことがある。遺伝子解析が保険適応になり、その診断に有用であるが陰性の証明にはならず、その適応は慎重であるべきである。