[I-P3-3-01] 修正大血管転位術後の左心房機能:解剖学的修復のpitfall
Keywords:心房機能, 修正大血管転位症, ダブルスイッチ手術
【背景】体心室(右室、左室)と房室弁(三尖弁、僧帽弁)の形態と機能の差異は修正大血管転位(ccTGA)患者の治療と管理には極めて重要な要因である。しかし、体循環を担う左心房の形態や機能に関する報告はなく、予後に与える影響は不明である。左心房機能には、Reservoir機能、Conduit機能、Booster pump機能の三つに分けられ、肺静脈血流波形、房室弁の通過血流波形と共に、容量変化が用いられるが、Double switch術のように解剖学的に複雑な修復をされている場合は、左心房機能評価の指標を得ること自体が困難な場合がある。【目的】修正大血管転位症に対する解剖学的修復術後(AR)と機能的修復術後(FR)での遠隔期左心房機能の差異を検討する。【方法】正常心のコントロール、FR患者、AR患者のそれぞれ1名ずつを3D cine MRI画像を取得。全時相の左心房輪郭をtraceし、Simpson法で容積計測を行った。左心房容積指標をもとに、1心拍における左心房容積の変化を評価し、最大左房容積(LAVmax)、最小左心房容積(LAVmin)より、Total emptying function[(LAVmax-LAVmin)/LAVmax]とExpansion index[(LAVmax-LAVmin)/LAVmin]を求めることで、左心房のReservoir機能を評価した。【結果】FR患者の左心房は拡大し、正常心房の約2倍のLAVmaxを示していたが、Expansion indexは60%と比較的reservoir機能は保たれていた。AR術後の左心房は正常心とほぼ変わらないLAVmaxは53mlではあるが、Total emptying functionは22%および、Emptying functionは29%と低値を示し、正常心やFR患者よりもReservoir機能の低下が示唆された。【結語】AR患者の左心房機能はFR患者に比べReservoir機能は低下している。AR患者の左心房機能異常はAR患者でのFR患者に対する遠隔期成績の優位性を阻止する要因の可能性がある。ccTGA患者の外科的修復術後には体心室機能評価に加え、左心房機能を含めた総合的な心血管機能の解析が重要である。