第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

成人先天性心疾患

ポスター発表(I-P3-3)
成人先天性心疾患 II

2022年7月21日(木) 16:20 〜 17:20 ポスター会場

座長:先崎 秀明(日本医療科学大学 小児総合地域医療学)
座長:平田 陽一郎(北里大学医学部 小児科)

[I-P3-3-01] 修正大血管転位術後の左心房機能:解剖学的修復のpitfall

石井 奈津子1, 大内 秀雄2, 森 有希2, 吉田 礼2, 伊藤 裕貴2, 藤本 一途2, 岩朝 徹2, 坂口 平馬2, 森田 佳明3, 黒嵜 健一2 (1.国立循環器病研究センター 心臓血管内科, 2.国立循環器病研究センター 小児循環器内科, 3.国立循環器病研究センター 放射線科)

キーワード:心房機能, 修正大血管転位症, ダブルスイッチ手術

【背景】体心室(右室、左室)と房室弁(三尖弁、僧帽弁)の形態と機能の差異は修正大血管転位(ccTGA)患者の治療と管理には極めて重要な要因である。しかし、体循環を担う左心房の形態や機能に関する報告はなく、予後に与える影響は不明である。左心房機能には、Reservoir機能、Conduit機能、Booster pump機能の三つに分けられ、肺静脈血流波形、房室弁の通過血流波形と共に、容量変化が用いられるが、Double switch術のように解剖学的に複雑な修復をされている場合は、左心房機能評価の指標を得ること自体が困難な場合がある。【目的】修正大血管転位症に対する解剖学的修復術後(AR)と機能的修復術後(FR)での遠隔期左心房機能の差異を検討する。【方法】正常心のコントロール、FR患者、AR患者のそれぞれ1名ずつを3D cine MRI画像を取得。全時相の左心房輪郭をtraceし、Simpson法で容積計測を行った。左心房容積指標をもとに、1心拍における左心房容積の変化を評価し、最大左房容積(LAVmax)、最小左心房容積(LAVmin)より、Total emptying function[(LAVmax-LAVmin)/LAVmax]とExpansion index[(LAVmax-LAVmin)/LAVmin]を求めることで、左心房のReservoir機能を評価した。【結果】FR患者の左心房は拡大し、正常心房の約2倍のLAVmaxを示していたが、Expansion indexは60%と比較的reservoir機能は保たれていた。AR術後の左心房は正常心とほぼ変わらないLAVmaxは53mlではあるが、Total emptying functionは22%および、Emptying functionは29%と低値を示し、正常心やFR患者よりもReservoir機能の低下が示唆された。【結語】AR患者の左心房機能はFR患者に比べReservoir機能は低下している。AR患者の左心房機能異常はAR患者でのFR患者に対する遠隔期成績の優位性を阻止する要因の可能性がある。ccTGA患者の外科的修復術後には体心室機能評価に加え、左心房機能を含めた総合的な心血管機能の解析が重要である。