[I-P3-3-04] 成人先天性心疾患患者の終末期における在宅医療の重要性
キーワード:成人先天性心疾患, 在宅医療, 終末期
成人先天性心疾患患者は長い経過や複雑な血行動態などからその治療や患者自身の生活環境の整備に難渋することも多いが、在宅医療を導入しその重要性を感じた一例を経験した。症例は45歳男性。生後チアノーゼがあり極型ファロー四徴症と診断され、8歳と18歳時にRastelli術を施行した。術後も肺動脈分岐部の狭窄が残存しており、30歳頃から右心不全、致死的不整脈を認めるようになった。カテーテル検査では右室圧上昇、右室拡大、右室収縮拡張能低下を認め、高い静脈圧に起因する肝硬変や繰り返す心不全に伴う腎機能障害も合併した。肝不全に伴うアンモニア上昇があり、せん妄や状態が改善しないことに対してのうつ症状も認め、精神的介入も必要とした。手術介入や内科治療を行うも心不全増悪での入院加療を繰り返し、在宅訪問診療を導入し自宅でもカテコラミン持続投与を行った。その後、在宅期間は伸びたものの入退院を繰り返し、45歳の心不全増悪での入院時に多臓器不全となり永眠された。ファロー四徴症の術後成績は改善してきており、術後30年の生存率は90%とされる。しかし、本症例のように成人期に心不全、不整脈等に関しての加療が必要となるも心不全を繰り返し、徐々に治療の選択肢が狭まってくる例も経験される。本症例では入退院を繰り返すも在宅医療を導入し、自宅で過ごす時間を確保することができた。この症例を通して、各専門医、看護師、ソーシャルワーカーなどによるチーム医療で、成人先天性心疾患患者の終末期医療におけるQOLや社会生活に目を向けた包括的なケアを行うことの重要性を感じた。