[I-P3-3-05] 成人部分肺静脈還流異常症の治療経験―中期遠隔期を含めてー
キーワード:部分肺静脈還流異常, 成人先天性心疾患, 中期遠隔期
(目的)部分肺静脈還流異常症の成人症例は、成長がないという点と併存疾患がありうる事で、小児期とは治療方針が異なってくる。今回我々は、過去15年間に経験した成人部分肺静脈還流異常症例を、還流部位のタイプにより、中期遠隔期を含めた治療法の検討を行ったので報告する。(対象)症例は6例で、年齢は18~75歳であった。右上肺静脈のSVCへの還流異常が3例で、左上肺静脈の無名静脈への還流異常が2例で、右中下肺静脈の下大静脈へ還流異常(Scimitar症候群)が1例であった。左上肺静脈還流異常症の主病変は、1例が大動脈狭窄症で1例が狭心症であった。(結果)上大静脈へ還流している3例は、Williams法に準じてSVCと右心耳をGore-tex人工血管で吻合し、ASDを介して肺静脈が左房に還流するよう中隔を形成した。術後6、7、15年経過しているが、新たな不整脈の発生はなく、人工血管の狭窄もなく、投薬なしで経過良好である。無名静脈に還流するタイプに関して、大動脈弁狭窄症の症例は、低心機能に加え、呼吸機能も悪く、Qp/Qs=1.2のため左上肺静脈還流異常は放置した。術後5年経過しているが特に問題はない。また、狭心症の症例は、冠動脈バイパス手術時に、左上肺静脈を切離し左心耳と直接吻合した。術後6か月後のCTで吻合部の閉塞が認められたが、関連する症状は発生しなかった。Scimitar症候群の症例は75歳と高齢で、本人が開心術を拒否したため、下行大動脈から右肺動脈系への異常動脈の塞栓術のみ施行された。塞栓術後6年を経過しており、心房細動を契機に悪化したが、その後Ablationを施行し軽快している。(結語)SVCに還流するタイプは、手術成績は問題なく、経過良好であった。他のタイプは、高齢で主病変の治療を施行すれば、積極的な手術を支持する経過は認められなかった。