[I-P3-3-07] 精神遅滞を伴う成人先天性心疾患患者における緩和ケアに向けての諸問題 -Eisenmenger症候群を呈する成人21 trisomy症例から考える
キーワード:mental retardation, palliative care, Eisenmenger syndrome
【背景】成人先天性心疾患(ACHD)患者は生涯にわたって慢性疾患を抱えて過ごし、重症例は若年で死亡することも多く、その意思決定における両親の意向が強いという特徴がある。また、染色体異常や精神遅滞を伴うACHD患者では、社会的自立が難しく、両親や家族のサポートへの依存度がさらに高い。精神遅滞を伴うACHD患者の緩和ケアに向けての諸問題について考察した。【症例】33歳女性。出生後に21 trisomyと診断され、乳幼児期には肺炎入院を反復していた。小学校の心臓検診でRVHを認め、心房中隔欠損症、動脈管開存症、肺高血圧(PH)と診断された。6、7歳時の心カテーテル検査で手術適応なしと判断され、PH、Eisenmenger syndromeに対し18歳から抗PH剤を開始し、19歳から在宅酸素を開始した。33歳2ヶ月時にANCA関連血管炎、間質性腎症を発症し、ステロイド等で加療を行った。入院中に喀血やPHに伴う意識消失を生じ、日常生活動作(ADL)も低下した。33歳11ヶ月時に右大腿静脈血栓症を発症しヘパリン、エドキサバン投与を行った。SpO2は酸素3L/分投与下で80-90%であり、その後も喀血や意識消失を繰り返している。10年前に母が要介護状態となり、その後は姉が主な介護者となり2人で生活している(父は1年前に死去)。ADL低下のため移動に車椅子が必要となり、日常生活も介助が必要となったため、多職種で連携して在宅療養支援の工夫を行った。喀血で入院した際に、姉に対して緩和ケアについての説明を行い、代理意思決定を行った。【考察】循環器疾患は病状が長期にわたり変化しやすく、終末期を正確に把握することが難しく、緩和ケア導入のタイミングを捉えるのが難しい。また、精神遅滞患者における終末期の代理意思決定についても明確な指針はない。精神遅滞を伴うACHD患者では「親なき後問題」も抱えており、社会的ニーズに見合った医療体制の確立が必要である。