[I-P3-3-10] 帝王切開時の胎盤娩出後の循環血液量の増加に関する評価
Keywords:心エコー, 循環血液量, 帝王切開
【目的】帝王切開手術による胎児・胎盤娩出後に母体の静脈還流量増加に伴い循環血液量が増加するかどうかを経胸壁二次元・三次元心エコー図を用いて検証する。【方法】超音波装置:PHILIPS社製EPIQ Elite, EPIQ CVx, X5-1セクタ探触子 解析ソフト:Dynamic Heart Model (PHILIPS), Auto-RV (TOMTEC) 対象:宮崎大学附属病院にて帝王切開を予定され、母体心臓に構造・機能異常ない妊娠満期3名計測項目:2D 右室流入平均血流速度(RVIF-mean V)、三尖弁逆流速度、三尖弁輪収縮期運動距離、右室駆出血流量(2D RVSV);3D 右室拡張末期容量 (3D RVEDV)、右室収縮末期容量(3D RVESV)、右室駆出血流量(3D RVSV)計測タイミング:帝王切開手術開始直前、腹膜切開時、子宮切開時、児娩出時、胎盤娩出時、子宮筋層1層目縫合時、子宮筋層2層目縫合時、子宮を腹腔内に戻した時【結果】妊娠38週3名において予定帝王切開時に上記検査を施行した。3症例とも児・胎盤娩出後にRVIF-mean V, 2D RVSV, 3D RVSVが増加した(症例1; RVIF-mean V 25 to 40 cm/s, 2D RVSV 83 ml to 92 ml, 3D RVSV 75 ml to 95 ml, 症例2; RVIF- mean V 58 to 74 cm/s, 2D RVSV 85 ml to 94 ml, 3D RVSV 80 ml to 96 ml, 症例3; RVIF mean V 31 to 41 cm/s, 2D RVSV 58 ml to 72 ml, 3D RVSV 56 ml to 78 ml)。上記の値は児娩出、胎盤娩出後に上昇し、子宮筋層2層目縫合時には概ね児娩出前の値に戻る特徴を示した。【考察】妊娠38週の帝王切開において、胎児・胎盤娩出後に子宮が退縮する際に右心房へ戻る循環血液量が増加する事が推測された。子宮筋層を貫通するらせん動脈の収縮により子宮筋層に保たれている血液の循環血液への自家輸血の機序に加えて、子宮退縮により下大静脈への圧迫が解除されvenous returnが改善した機序も一因と考えられる。このパイロット試験の結果を受け、今後研究を継続していく予定である。