[I-P3-3-11] 単一産科医院出生新生児全例に対する産科用エコー心臓スクリーニング検査の有用性
キーワード:産科医院, 心エコースクリーニング, 心室中隔欠損
[はじめに]以前より当科では近隣の産科医院に出向き、新生児検診で心雑音を聴取する症例に対して産科用エコーでスクリーニングを行い、器質疾患を疑う場合に当科で精査する方法により、多くの先天性心疾患(CHD)を発見してきた。しかしながら、無症候性のCHDを見落としている可能性を否定できず、今回、頻度が多く比較的問題となりやすい心室中隔欠損(VSD)についてこの方法の妥当性について検討したので報告する。[方法]2019年3月から2021年8月までに単一開業産科医院で出生した全新生児419人を対象とした。出生後入院中の新生児検診時に産科用エコーを用いて心エコースクリーニングを行い、CHDを疑う場合には当科に紹介として精密検査を行った。[結果]期間中に診断されたVSDは11例であった(26.3例/1000出生)。VSDの部位別割合は、傍膜様部型(II型)2例、筋性部型(IV型)9例であった。VSDの頻度、部位別の割合、経過等は、以前我々が報告したものと大きな差はなかった。今回、機能性心雑音と鑑別できない軽度の心雑音を聴取するVSD症例は多かったが、全く心雑音を聴取しない症例はなかった。[考察]欧米の報告では、IV型VSDの9割は心雑音を聴取しないとしているが、今回の検討では、軽度の心雑音は全例で聴取した。機能性心雑音と考えられるような軽度の心雑音に対しても積極的に心エコーを行う方法により、新生児全例に心エコースクリーニングを行う場合と同等にVSDを発見できた。心エコーを行うことが難しい産科医院等においては、心雑音を聴取した場合、安易に機能性心雑音とすることなく小児循環器医に紹介することが必要と考えられた。[結語]先天性心疾患に対して十分な検索を行えない開業産科医院においては、心雑音を聴取した場合、機能性心雑音とすることなく積極的に小児循環器医に紹介するべきである。