第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

心不全・心移植

ポスター発表(I-P3-4)
心不全・心移植 II

2022年7月21日(木) 16:20 〜 17:20 ポスター会場

座長:小林 俊樹(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)
座長:星合 美奈子(山梨県立中央病院小児循環器病センター 小児科)

[I-P3-4-02] 左室緻密化障害合併拡張型心筋症に対する補助人工心臓装着後 心機能回復の可能性

長谷川 然, 平 将生, 渡邊 卓次, 富永 佑児, 上野 高義, 宮川 繁 (大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科学)

キーワード:左室緻密化障害, Berlin Heart EXCOR, 拡張障害

【背景】左室緻密化障害(left ventricular noncompaction; LVNC)を合併する拡張型心筋症(DCM)は予後不良と報告されている. 予後不良の末期重症心不全を呈する小児DCM患者に対し,当院ではBerlin Heart EXCOR(BHE)装着し心臓移植待機とする例が多い.その中で,左室unloadingにより心機能回復,BHE離脱となる症例が存在する.当科では左室心筋の組織学的検討を加えて,それらの臨床経過の報告を行ってきた.しかし,報告例の中にはLVNC合併症例と非合併症例が存在し,LVNC合併の有無という点での心機能回復の差異については明確な見解を示していない.そこで今回,小児DCM患者の組織学的所見およびBHE装着後の臨床経過を,LVNC合併症例と非合併症例とで比較検討を行った.【対象と方法】2013年1月から2020年9月に当院にてDCMの診断(secondary DCMは除外)でBTTとしてEXCORを装着した17例. LVNC合併DCM(NC群)6例,LVNC非合併DCM(DCM群)11例の2群に分けた. BHE装着前後の心機能の推移とBHE装着時の左室心筋組織標本を比較した.【結果】BHE装着時の中央値月齢はNC群6(4-25)ヶ月,DCM群8(1-55)ヶ月.転帰はNC群で移植到達3例,BHE離脱(低酸素脳症)1例, 装着中症例が2例.DCM群で移植到達4例,心機能回復に伴うBHE離脱が6例,装着中が1例.BHE装着時の左室心筋の線維化率の平均はNC群26.8%,DCM群18.4% (p=0.04).LVEFに関して,装着前→装着後6ヶ月でNC群32.7→31.3%, DCM群13.8→45.6%と推移した.また,BHE装着前の左室の大きさを100%とした時の縮小率(装着後1月,装着後6月)はNC群46%, 18%, DCM群60%, 72%であった.心臓カテーテル検査でのPCWPの推移(装着前, 装着後3月, 装着後6月)は, NC群 17.8, 8.7, 12.0 mmHg, DCM群 17.0, 4.7, 7.0mmHgであった.【まとめ】NC群ではBHE装着後の心機能回復症例がなかった. NC群はDCM群と比較し左室心筋線維化率が高く, BHE装着後の経過としてはLVEF改善とLVDd縮小が乏しくPCWPは経時的に上昇する傾向にあった.