[I-P3-5-03] 心房中隔欠損症において右室圧上昇は左室前負荷予備能を低下させる
Keywords:心房中隔欠損症, 肺高血圧症, 心不全
【背景】 右心系容量負荷を伴う心房中隔欠損症では、拡張期心室間連関や心房心室連関を介して左室拡張機能不全に至る症例が存在し、特に肺高血圧症を合併する場合の循環管理は困難である。充分な右心系容量負荷を伴う心房中隔欠損症例の左室拡張特性と右心系循環の関連を解析した。【対象と方法】 当科で外科治療の適応とした大欠損の心房中隔欠損症54例の術前血行動態データを解析し、容量負荷に加え右室圧負荷が存在する場合の左心系血行動態に与える影響を解析した。【結果】対象は年齢8.0±3.4歳、Qp/Qs 2.6±0.8、右室容積 242±73%N、左室容積 98±21%N、右室/左室収縮期圧比0.35±0.9であった。左房圧は右室および左室心室拡張末期圧(p<0.001)と正相関を認め、大きな心房中隔欠損症の循環を反映していた。左房圧、左室拡張末期圧は左室容積と関連がなかったが、左室拡張末期圧と右室容積は正相関を示し(p=0.021)、拡張期心室間連関を介した左室拡張機能障害の存在が示唆された。右室収縮期圧はQp/Qsや肺血流量と関連しなかったが、興味深いことに左房圧と右室収縮期圧の間に強い正相関を認め(R2= 0.28, p=0.017)、大きな心房間交通を介した受動型肺高血圧症の潜在的関与が示唆された。実際、右室圧40~50mHg以上の症例も心房間交通閉鎖後早期に正常化が確認された。【結論】大きな心房中隔欠損症に右室圧上昇を伴う症例では、左房・右房・右室からなる右心系循環と左室前負荷は独立して機能している循環が示唆された。右室拡大は左室拡張末期圧および左房圧と正相関し、更に右室収縮期圧上昇も独立して左房圧上昇と関わることから、右心系拡大に伴う左室拡張障害は右室圧上昇により増悪することが示唆された。従って、小児期の大きな心房中隔欠損症に伴う肺高血圧症には右心系容量負荷軽減により肺動脈圧を低下させ左室拡張を改善する戦略が有効となる。