[I-P3-5-04] 術後の肺静脈狭窄に対しopen stent法とシロリムス内服療法を行った総肺静脈還流異常の1例
Keywords:PVS, sirolimus, TAPVC
【背景】乳幼児および小児の肺静脈狭窄症 (PVS) は先天性心疾患のわずか0.4%と稀な疾患である。狭窄部位への外科的介入を行っても術後に再発を起こすだけでなく、末梢側へ狭窄が及ぶなど難治性の経過をとることがある。近年mTOR阻害薬のsirolimus投与がPVS再発を抑制する報告がある。【症例】6か月男児。双胎のため在胎34週6日、体重 2393g、帝王切開により出生した。出生直後に傍心臓型の総肺静脈還流異常;Darling分類2aと診断された。日齢4に心内修復術を実施し術後経過に問題なかったが、月齢4か月時に哺乳不良があり、左右両側・特に左で共通肺静脈腔への流入部肺静脈に強い狭窄を認めた。直ちに外科的修復および心房間交通作成術を行い、左右ともPVSは解除されアスピリン内服を開始して術後17日目に退院した。6か月時(術後54日)、再び哺乳不良が出現し、両側の共通肺静脈腔への合流部からの狭窄が再燃し、心房間交通の狭小化も認めた。再手術は心房間交通の再拡大およびopen stent法を選択した。両側肺静脈へExpressTM LD 8*17mmを右 5mm、左 7mmの長さにカットして留置を行った。ステント狭窄予防として術後からアスピリン・ワーファリンに加えてsirolimus内服を行い、トラフ値 6.3~11.3 ng/mlで管理した。術後1か月のカテ評価および術後3か月までの外来フォローでステント内腔に狭窄はなく良好に経過している。【考察】小児のPVSのステント狭窄がsirolimusの全身投与で予防される効果は、ステント内の新生内膜の増殖をきたす血管平滑筋細胞の分裂を阻止する機序が考えられている。ただ、免疫抑制による副作用や貧血、高脂血症などの副次的イベントも報告されており、定期的なトラフ値の測定や副作用チェックを行う必要がある。【結語】sirolimus内服はステント留置後のPVS再燃予防に効果的な可能性がある。