第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスター発表(I-P3-5)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 II

2022年7月21日(木) 16:20 〜 17:20 ポスター会場

座長:柴田 映道(慶應義塾大学医学部 小児科学)
座長:手島 秀剛(市立大村市民病院 小児科)

[I-P3-5-12] Jatene, LeCompte術後に左気管支軟化症を呈した完全大血管転位Ι型の一例

福島 直哉1,2, 前田 潤1, 吉村 幸浩3 (1.東京都立小児総合医療センター循環器科, 2.平塚市民病院小児科, 3.東京都立小児総合医療センター心臓血管外科)

キーワード:完全大血管転位, 気管支軟化症, 術後合併症

<背景> Jatene, LeCompte術後の合併症として, 気道症状を呈する報告は稀である. 今回, Jatene, LeCompte術後に左気管支軟化症による気道閉塞症状を呈した1例を経験し, その診断・治療から得た知見を報告する. <経過> 完全大血管転位Ι型術後の5歳男児. 日齢0にバルーン心房中隔切開術, 日齢8にJatene, LeCompte手術実施後, 創部感染のため1か月間, 陰圧閉鎖療法がおこなわれた. 術後3か月時に無症状であったが, 胸部レントゲン検査で左肺血管陰影の低下, 肺血流シンチグラフィー検査で左肺血流の著明な低下所見(血流比 右 93%, 左 7%)を認めた一方で, 心臓超音波検査では右末梢性肺動脈狭窄が疑われ, 検査所見での乖離が見られた. 術後4か月時, 心臓カテーテル検査の全身麻酔導入時に左肺の換気不良が判明, 気管支ファイバーで前方からの拍動性の圧排に起因する左気管支軟化による高度狭小所見が見られた. 血管造影では左肺動脈狭窄を認めなかった.ことから, 換気不良が左肺血流減少の原因と判断した. 術後5か月時に右肺動脈形成, 主肺動脈縫縮, 大動脈つり上げ術を行い, 左気管支軟化所見は改善し, 以後, 気道症状の再燃はない. <考察> Jatene, LeCompte術後に左気管支軟化所見を呈した報告例は過去に5例あり, 2例が新大動脈および気管支周囲の剥離術で, 2例が大動脈つりあげ術で改善し, 残る1例もつり上げ術が予定されていた. 新肺動脈後方に上行大動脈が移植されることで, 左気管支にとって高圧の上行大動脈が前方から接し後方に椎体がある解剖学的位置関係となることが気管支軟化の原因と考察されている. 本例では同様の位置関係に加え, 新大動脈基部が術後早期から拡大傾向であったこと, 大血管の位置が前後関係であったことなど複合的な要因が考えられる. また, 術後に画像所見に乖離がある場合には, 症状に乏しくても換気不良による血流低下の可能性があることを念頭におくことが肝要である.