[I-P3-7-06] 左室依存冠循環合併の左心低形成症候群に対するNorwood手術の1例:その診断と心筋保護の工夫
キーワード:左心低形成症候群, 左室冠動脈瘻, Norwood手術
【背景】左心低形成症候群(HLHS)の左室冠動脈瘻(LVCAF)では冠動脈離断などにより左室依存冠循環を呈すると,治療戦略を建てづらく時に救命が困難となる場合がある. 今回,左前下行枝(LAD)の左室冠動脈瘻および離断,左室起始症例を経験し,心筋保護の工夫により人工心肺下のNorwood手術を耐術しえたので報告する.【症例】胎児診断なく,在胎週数36週5日2612gで出生した男児. 日齢2に酸素化不良のため当院へ転院搬送, HLHS(僧帽弁狭窄/ 大動脈弁閉鎖), LVCAFの診断となった. 日齢4に両側肺動脈絞扼術を施行, 卵円孔狭小化あり日齢28に経皮的心房中隔裂開術を行った. この際,冠動脈および左室造影を行いLADはLVCAFかつ離断しており, LADの遠位は左室から起始し右冠動脈と交通を持つ形態と診断した. 左室依存冠循環であり, 手術における心停止、再還流後の心機能低下が懸念された.動脈管ステント等による更なる待機は手術時の心筋虚血のリスク軽減にはつながらないと判断し,生後1ヶ月でNorwood手術(右室-肺動脈導管), 心房中隔欠損拡大, 右上肺静脈狭窄解除術を行った. 腕頭動脈送血は通常より低い25度とし, 心停止のタイミングは左室冠動脈瘻を介した冠動脈末梢の空気塞栓を懸念し主肺動脈切断から行った. 心筋保護液は上行大動脈経由の順行性, 冠静脈経由の逆行性に加え, 経僧帽弁での左室冠動脈瘻経由の直接注入も追加した. 人工心肺離脱時に高度房室ブロックを呈したものの著しい局在性の心筋壁運動低下はなく房室ブロックはその後自然軽快した. 術後縦隔洞炎を合併したが,術後41日にICU退室, 術後62日に自宅退院した. 退院後は生後5か月弱で両方向性グレン手術を施行,その後βブロッカー等による心不全治療を加え,現在フォンタン手術待機中である.【考察・結語】最重症の冠動脈形態のHLHS症例において適切な検査による診断と術中管理の工夫によりNorwood手術を耐術し救命に繋がった症例を経験した.