[I-PD01-07] Short coupled variant of TdPの病態を呈し、electrical stormに至った先天性QT延長症候群
Keywords:LQT3, short coupled variant of TdP, Ca拮抗薬
【背景】先天性QT延長症候群3型(LQT3)はSCN5A遺伝子変異を背景とし、安静時や睡眠中にtorsade de pointes(TdP)や突然死を来す。同変異はBrugada症候群や進行性伝導障害でも同定され、overlapを含め多様な表現型が存在する。特にプルキンエ繊維由来の多源性心室期外収縮(MEPPC)を特徴とする一群はTdPを頻発する。【症例】10歳男児。胎児期に2:1房室ブロックを指摘され、出生後の心電図およびSCN5A遺伝子変異(c.4868G>A)からLQT3と診断した。β遮断薬およびメキシレチン治療に抵抗性であり、TdP/VFを繰りかえすため、6カ月時にICD植え込み術を施行した。以後投薬併用下にQTcF=402msとコントロール良好で経過したが、8歳時にelectrical storm(ES)が頻発した時期があり、β遮断薬をナドロールに変更した。10歳時にショックリードが断線し、経右房的に心尖部へリード留置を行った。術後鎮静中はTdPなく経過したが、覚醒後からTdP/VFを繰り返し、ESとなった。投薬・ペーシングレート調整およびモード変更等行ったが、QTcFはほぼ400-450msで経過したにもかかわらず、その後もESは続き、鎮静から離脱できなかった。short coupled variant of TdPを疑いVF頻発の際のICDチェックで、非常に短い連結期 (280msec)のPVCを確認した。この所見に基づいてCa拮抗薬を併用し、VF無く管理することができた。【考察】Walid. Bらは、本症例で認めた変異とMAPPCの強い関連を報告している。本例は、ショックリード植え込みを契機としてMAPPC 増悪からshort coupled variant of TdPによるESへ移行したと推定され、Ca拮抗薬が著効した点もMAPPCが背景に存在した可能性を支持する。【結論】LQT3には、プルキンエ繊維の易興奮性を有する一群があり、標準的治療に不応の場合、本病態を念頭においた管理を検討する必要がある。