第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション1(I-PD01)
最新の遺伝性不整脈の臨床

2022年7月21日(木) 09:50 〜 11:20 第2会場 (大ホールA)

座長:鈴木 嗣敏(大阪市立総合医療センター 小児不整脈科)
座長:堀米 仁志(茨城県立こども病院 小児循環器科)

[I-PD01-07] Short coupled variant of TdPの病態を呈し、electrical stormに至った先天性QT延長症候群

佐藤 啓1, 齋木 宏文1, 高橋 卓也1, 齋藤 寛治1, 滝沢 友里恵1, 桑田 聖子1, 中野 智1, 佐藤 有美1, 後藤 拓弥2, 小泉 淳一2, 小山 耕太郎1,3 (1.岩手医科大学附属病院 小児科, 2.岩手医科大学附属病院 心臓血管外科, 3.みちのく療育園)

キーワード:LQT3, short coupled variant of TdP, Ca拮抗薬

【背景】先天性QT延長症候群3型(LQT3)はSCN5A遺伝子変異を背景とし、安静時や睡眠中にtorsade de pointes(TdP)や突然死を来す。同変異はBrugada症候群や進行性伝導障害でも同定され、overlapを含め多様な表現型が存在する。特にプルキンエ繊維由来の多源性心室期外収縮(MEPPC)を特徴とする一群はTdPを頻発する。【症例】10歳男児。胎児期に2:1房室ブロックを指摘され、出生後の心電図およびSCN5A遺伝子変異(c.4868G>A)からLQT3と診断した。β遮断薬およびメキシレチン治療に抵抗性であり、TdP/VFを繰りかえすため、6カ月時にICD植え込み術を施行した。以後投薬併用下にQTcF=402msとコントロール良好で経過したが、8歳時にelectrical storm(ES)が頻発した時期があり、β遮断薬をナドロールに変更した。10歳時にショックリードが断線し、経右房的に心尖部へリード留置を行った。術後鎮静中はTdPなく経過したが、覚醒後からTdP/VFを繰り返し、ESとなった。投薬・ペーシングレート調整およびモード変更等行ったが、QTcFはほぼ400-450msで経過したにもかかわらず、その後もESは続き、鎮静から離脱できなかった。short coupled variant of TdPを疑いVF頻発の際のICDチェックで、非常に短い連結期 (280msec)のPVCを確認した。この所見に基づいてCa拮抗薬を併用し、VF無く管理することができた。【考察】Walid. Bらは、本症例で認めた変異とMAPPCの強い関連を報告している。本例は、ショックリード植え込みを契機としてMAPPC 増悪からshort coupled variant of TdPによるESへ移行したと推定され、Ca拮抗薬が著効した点もMAPPCが背景に存在した可能性を支持する。【結論】LQT3には、プルキンエ繊維の易興奮性を有する一群があり、標準的治療に不応の場合、本病態を念頭においた管理を検討する必要がある。