[I-PD02-01] 小児医療機器開発の現状
Keywords:小児医療機器, デバイスラグ, Harmonization By Doing
デバイスラグとは,海外では使用が認められている医療機器が、本邦で承認されていないため使用できない状況を指す.特に小児用医療機器ではこの問題は深刻であり,長く旧来の治療に頼らざるを得ない状況が続いている.デバイスラグを取り巻く状況として,1)成人に比べた症例数の少なさ,2)先天性心疾患の多様性,3)適応外使用(オフラベルユース)の常態化,4)国内施設による集合データの欠如,などが挙げられる。デバイスラグは開発ラグと審査ラグから構成されており,前者は開発コストを早期に回収するために大規模な市場を有する国(米国、欧州)で開発が急がれる傾向も背景となっている.小児用医療機器開発の問題点には,開発費用の少なさ,大規模治験の困難さ,対象患者の多様性,高い有効性と安全性が求められること等に加え,製造販売承認に係るコストや販売後の利益を見込むことが難しく,販売企業にとって重要な「予見性」が乏しいことも挙げられる.開発推進では産官学の協力体制が重要であり,その取り組みとして2016 年から小児用医療機器に注目したHarmonization By Doing for Children(HBD for Children)が開始され,メドトロニック社のHarmony経カテーテル肺動脈弁システムが,小児用医療機器としては初めての日米国際共同治験が実施されるに至った.また,効率的な臨床データ(リアルワールドデータ)の利活用による開発コスト低減への試みとして,Abbott社のAmplatzerピッコロ・オクルーダーにおいては,JCIC レジストリを用いた市販後調査が行われている.このような背景を踏まえ,「小児用医療機器の日米同時開発に係る課題抽出等に関する研究(AMED)」が2019年から3年間で行われ小児用医療機器の開発における課題の抽出,解決に向けた提案を行われた.本項ではその結果に関しての概説を行う.