The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム04(I-SY04)
移行医療委員会

先天性心疾患患者の緩和医療~善く生きるために何が出来るのか~

Thu. Jul 21, 2022 9:50 AM - 11:50 AM 第3会場 (大ホールC)

座長:落合 亮太(横浜市立大学医学部 看護学科)
座長:城戸 佐知子(兵庫県立こども病院 循環器内科)

[I-SY04-01] 緩和ケアマインドを持った先天性心疾患医療・・その背景としての死生学・・

中澤 誠 (総合南東北病院)

Keywords:緩和ケア, 死生学, narrative based medicine

[はじめに]先天性心疾患(CHD)は親・本人へ大きな苦痛を与える。従って出生直後から技術医療と共に苦痛緩和が求められる。苦痛の深層には死の意識が潜んでいるので、死について学び同時に生き方を考える学問、死生学の知識を持って苦痛緩和に役立てたい。以下、死生学的に見た患者家族の心理を述べる。[CHD児の親の心理]Droterらは、重篤・致死疾患児出生に伴う親の心理は、ショック、拒絶、不安怒り、価値観変換などを経験するとし、死に行く本人の心理と同様である。親は児の疾患を自分の事と捉えている。[死に対する子どもの心理](1) 死の認知年齢:仲村らによれば6~8歳で死をほぼ正しく理解する。(2) 死に行く心理:孤独離別の恐怖が大きい。(3) 親への気遣い:親に“これ以上”苦痛を与えたくないと思う。(4) 死に行く子の親の心理:罪責感後悔が蘇り孤独感が強く医師の寄り添う姿勢を求める。(5) 同胞の心理:健常な同胞は我慢を強いられ、同時に必死に受け止めようとする。[医師・医療の対応](1) 医師の忌避:75%の医師は「良くない知らせ」を患者に話すのを躊躇する。(2) 患者の希望:クラウスは「患者・家族が見捨てられたと感じないよう、最期まで頻回の訪室が必要」と述べている。(3) ペアレントケア:子どもの安心感が深まり、子どもと親の死への準備期間となる。親は子どもの助けになった安堵感、そして自責の念の緩和に役立つ。[成人先天性心疾患](1) 患者の心理:死を意識して生きており、合併症や入院、同病知人の死などによって、死をより現実に感じる。(2) 患者の生き方:健常者より(死を意識してか)前向きな生き方を求める人が多い。(3) 診療力点のシフト:narrative based medicineの比重が大きくなる。[CHDの医療モデルの提案]CHDでは出生時から技術医療と並行して緩和ケア的診療が求められる。