[I-SY04-04] 心臓血管外科医が考える先天性心疾患患児の緩和医療
キーワード:緩和医療, 先天性心疾患, 心臓手術
今回の企画への参加依頼を受けた時、まず心に浮かんだのは、今まで多くお付き合いさせて頂いた生後間もない赤ん坊とそのご両親に対してどんな緩和ができたのだろうかという疑問であり、そして次には小児循環器医療に携わる自分自身が亡くなる時にはどんな緩和を受けるのだろうという期待でありました。考えますと、今まで、治療を受ける赤ん坊に対しては一人の人格を持った人間として付き合うこと、また、治療継続中のご両親にはそれぞれの思いと希望になるべく寄り添うこと、これらを念頭に置いてきたつもりですが、改めて緩和について深く考えたことは無かったのではないかと思います。ただ、近年の祈りの効果に関する研究に影響を受け、どうしようもない時には神仏に頼ることは確かに多々ありました。それでも正直申しまして、赤ん坊とご両親へのそういった思いが少しおろそかになったこともありました。最も反省しますのは、我々の発言の影響力というもの、思いもよらず強いものであるということであります。特に治療の過程でお話することは結構簡単ではない。若手はもちろん我々も、医療が進歩すればするほど、緩和という命題を勉強しなければなりませんし、そして少なくとも、経験したことは残しておくべきと思います。もちろん外科医として、上手い手術を行うことこそ最大の緩和であることは間違いありません。加えて恐縮ですが、小児循環器医療は自分たちのことよりもむしろ他の人達のことで悩むものでもありますので、そういった治療の現場で働くチーム個々人の緩和も並行して進める必要があると考えます。先天性心疾患患児の緩和医療について皆さんとお話させて頂けること、心より感謝申し上げます。