[I-SY06-03] 小児特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(I/HPAH)患者のトータルケア;当院での現状と課題
キーワード:肺動脈性肺高血圧症, AYA世代, 精神的・社会的サポート
【背景】肺高血圧症標的治療薬の出現に伴い、治療成績が飛躍的に向上し、IPAH/HPAH患者の長期生存が可能となった。一方で、毎日の投薬や持続静注薬剤の管理などが必要とされること、頻回の外来受診、日常生活での制限など様々な制約は患者に大きな精神的肉体的負担を強いる可能性があることは想像に難くない。一方で、患者が小児期に発症し、その患者たちがAYA世代(Adolescent and Young Adult)に到達してきたときに、どのような負担を感じるかについては不明な点が多い。【目的】当院でフォローアップをしているAYA世代のIPAH/HPAH患者の現状を提示し、今後の課題について考察する。【結果】当院では、心臓カテーテル検査やPGI2持続静注導入前に、看護師が患者を取り巻く環境や病気への受け止めを確認し、また治療に必要な持続点滴の手技を指導し、退院にむけて自立できるよう支援している。またチャイルド・ライフ・スペシャリストは病気や治療の理解を助け、処置や検査のプレパレーションを行い、患児・家族の気持ちを受け止め、不安の軽減に努めている。加えて、患者会の開催を通して退院後もサポートすることで患児や家族のアドヒアランス向上に努めている。それでも、AYA世代になると、怠薬が判明したり、就学・就労で悩むケース、そして抑うつ傾向となるケースもみられた。【考察および結論】AYA世代は就学や就労、結婚や妊娠、育児など様々なライフイベントを迎える時期である。その中で、PAHを発症し治療を続けている患者にとっては、通学や仕事の継続に支障を来す可能性があり、また妊娠や出産が難しくなる場合もある。このことから、AYA世代のPAH治療は、医学的側面だけでなく、様々な問題点に配慮した精神的・社会的な面からのサポートが必要であると考える。