The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム07(I-SY07)
内科治療→補助循環→移植へ 適切なブリッジと出口戦略を日本全体の問題として考える

Thu. Jul 21, 2022 2:00 PM - 3:30 PM 第5会場 (中ホールB)

座長:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)
座長:平田 康隆(東京大学医学部附属病院 心臓外科)

[I-SY07-05] 日本の小児心臓移植の一層の成熟に向けて

福嶌 教偉 (千里金蘭大学大学院 看護学部・看護学研究科)

Keywords:心臓移植, ドナー, 心のケア

2010年に改正臓器移植法が施行され、2012年には乳幼児ドナーから乳幼児レシピエントの心臓移植が国内で実施され、2021年末までに60例の小児が国内で心臓移植を受け、海外渡航移植を希望する家族もあまり認められなくなった。2015年にEXCOR Pediatricが保険償還され、小さな児も国内で心臓移植を受けられるようになり、小型植込みVADの登場で、体の大きめの児は在宅で待機し、復学も可能になってきた。これらは、重症心不全の小児の救命という点では、非常に大きな進歩であるが、日本の小児心臓移植が一層成熟するには、まだまだ課題は多い。 まず、わが国には、愛児の臓器を提供した家族をケアする体制がほとんどないことである。日本の医療制度は、患者本人のケアを行うこと保障しているが、介護をする家族(親だけでなく、兄弟も含めて)のケアするシステムはない。かかる状態で愛児の死を受け入れ、その心臓を提供してくださっているのである。提供後の家族のケアをする公的制度はなく、愛児の心臓を提供したことを知人に話すことも憚れる現状がある。提供に関わる医療者だけでなく、移植に関わる医療者も真摯にどうすべきか考える必要があるのではないであろうか。 次に移植を待機する児、移植を受けた児とその家族(特に兄弟)の心のケア、児の精神運動発達を促す体制もわが国でも充実していない。施設の努力でchild life specialistを採用したり、病棟単位でVAD装着児の精神的支援やリハビリを行ったり、移植後の復学支援などを行っている。極めて長い入院待機生活を余儀なくされるわが国では、極めて重要な課題である。 最後に小児心臓移植・VAD施設は限定され、児がそのような施設まで到達できない場合も少なくない。児がどこに生まれても、平等に高度医療が受けられるような児搬送システムの構築も必要である。