The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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会長要望セッション

会長要望セッション1(I-YB01)
小児循環器科医の立場からPOTS(Postural Orthostatic tachycardia Syndrome)を考える

Thu. Jul 21, 2022 8:40 AM - 10:10 AM 第4会場 (中ホールA)

座長:小川 禎治(兵庫県立こども病院 循環器科)
座長:松浦 優子(国立病院機構災害医療センター 小児科)

[I-YB01-01] POTS(Postural tachycardia syndrome) その歴史、病型・病態、治療の概略

松浦 優子, 土井 庄三郎, 古川 陽介 (国立病院機構災害医療センター 小児科)

Keywords:Neuropathic, Hypovolemic, Hyperadrenargic

立位での循環調節障害により、立ち眩み症状をきたす疾患の総称を我が国では、小児領域で起立性調節障害、成人領域で起立不耐症と呼ぶ。起立不耐を生じる病態として体位性頻脈症候群、神経調節性失神、起立性低血圧が挙げられるが、狭義の起立不耐症としてPOTSを指すことが多い。立位での頻脈・動悸が臨床像を支配するため、患者の多くがある時点で循環器専門医を紹介受診することが多い。
病態生理的には、立位を契機にした下半身への体液貯留に対する神経性調節の破綻が原因と考えられる。診断基準は(1)起立試験/ヘッドアップチルト試験で心拍数30bpm以上の増加(12-19歳は40bpm)、(2)立位に伴う動悸、めまいなどの症状(3)起立性低血圧がない(4)6か月以上続く症状が用いられている。似たような病態は約150年前から存在し、南北戦争中兵士らの異常な頻脈や胸痛を循環器医Da Costaが“soldier’s heart” と表現し報告している。1993年にMayo ClinicがPOTSの診断基準を提言し米国の主要な学会に承認され現在まで使用されている。
最近の報告では2000年以来POTSの発生率は約4倍に増え、この20年間で報告数は急増している。その理由は、思春期に発症し就学や就労にあたる年齢層の生活の質に大きな影響を与え、診断、治療上の困難さにあると考えられる。POTSの病型は主なものとしてNeuropathic(神経障害),Hypovolemic(低用量),Hyperadrenargic(高アドレナリン)があり病態がオーバラップすることもある。患者の病態がどれに当てはまるか検討することが治療へのアプローチになる。Neuropathic は静脈還流の増大のため血管収縮剤が利用される。Hypovolemic は血管内容積増大のため十分な水分・塩分摂取が重要となる。Hyperadrenargic はβブロッカー、近年ではイバブラジン使用の報告もある。どの病態生理学的メカニズムが症状を生じているのか、病態は変化することを念頭におきながら診療にあたることが重要である。