第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望セッション

会長要望セッション1(I-YB01)
小児循環器科医の立場からPOTS(Postural Orthostatic tachycardia Syndrome)を考える

2022年7月21日(木) 08:40 〜 10:10 第4会場 (中ホールA)

座長:小川 禎治(兵庫県立こども病院 循環器科)
座長:松浦 優子(国立病院機構災害医療センター 小児科)

[I-YB01-04] 循環器内科短期入院による体位性頻脈症候群(POTS)の診断と管理

高室 基樹1, 澤田 まどか1, 名和 智裕1, 西村 和佳乃1, 實川 美緒花1,2 (1.北海道立子ども総合医療・療育センター 小児循環器内科, 2.手稲渓仁会病院 小児科)

キーワード:POTS, 新起立試験, ヘッドアップチルト試験

【背景】循環器科で担う失神の鑑別に際しヘッドアップチルト試験(HUT)で体位性頻脈症候群(POTS)を示す例も少なくない.【目的】起立性調節障害(OD)症状の評価を循環器内科の短期入院で施行し診断と治療方針策定を試みた.【対象】2021年2月から2022年1月まで失神およびOD症状の評価のため循環器科入院した12例(男6例).【方法】1日目,胸部X線写真,12誘導心電図,心エコー,ホルター心電図,末梢血液,生化学,甲状腺機能検査施行.2日目午前に小児ODガイドラインに依る新起立試験(OT).失神歴のある例はHUTを代用もしくは3日目に追加.起立不耐かガイドラインよりODと診断した症例は翌朝生理食塩水(NS)1Lを2時間で補液しOTもしくはHUTを再検.入院前に神経学的評価が不十分な症例は脳波,頭部MRI,MRAも併せて施行し3から4泊で退院とした.【結果】年齢11~16(中央値13.1)歳.てんかん,神経疾患例はなく,11例をPOTS(軽症2,中等症1,重症6,最重症2)と診断しえた.うち3例で起立直後性低血圧を,3例で血管迷走神経性失神(VVS)を合併していた.1例で右冠動脈左バルサルバ起始を有していたが症状はPOTSとVVSに起因すると診断した.POTS11例中7例に翌朝NS負荷を行い,全例で何らかの改善(心拍数増加,最大心拍数,起立耐容時間)を得た.うち1例は心拍数が正常化したにも拘わらず過換気を伴う起立不耐を呈し心理的側面が大きいと考え精神科に紹介した.【考察】POTSでは起床できないため午前中に来院できないことが多く,短期入院により連日の検査と終日のバイタル測定が可能となる.循環器と神経学的器質性疾患を除外し自律神経機能障害を確定することで,水分と塩分摂取を効果的に励行することが出来ると考えている.NS負荷は症状の本態が自律神経機能障害のみではない場合も適切な診療科への紹介に役立つ.今後はホルター心電図による自律神経機能評価も検討する予定である.