[I-YB02-03] Potts shunt の周術期管理ー集中治療の視点からー
Keywords:Potts shunt, 周術期管理, 集中治療
患者は13歳の男児。胎児期にintact IASを伴うHLHSが疑われたが、生後は2心室循環が成立。遷延性肺高血圧と僧帽弁狭窄/逆流に対して、1歳時にMVR施術。以降、over-systemicの肺高血圧と置換僧帽弁狭窄と左房圧上昇の状態で外来経過観察。喀血や労作時呼吸苦の症状を認めるため、手術目的で当院紹介。Potts shunt術及び再MVRとなった。 開胸のままICU帰室、止血及び循環適応を確認しPOD2で二期的胸骨閉鎖。覚醒遅延を認めた際に撮像した頭部CTで、急性硬膜下血腫を同定したが、覚醒遅延との因果関係は不明。時間経過で覚醒進みPOD6に抜管、選択的に非侵襲的陽圧換気療法を実施した。POD9に喉頭ファイバーで左反回神経麻痺を同定、誤嚥リスクありと判断。呼吸理学療法士と協力しながら、呼吸リハ強化と同時に嚥下能力の評価を開始。また、一酸化窒素療法の使用有無によるPotts shuntの短絡血流の評価を反復した。POD15に、陽圧サポートをBIPAPからHFNCへ変更。POD18から頭痛が増強したため撮像した頭部CTで、新規に右硬膜下血腫及び周囲の脳浮腫を同定し、POD19に開頭血腫除去術を実施、術後は脳保護療法を実施した。機械弁置換後に合併した脳出血であり、抗凝固療法の調整は心臓血管外科や脳外科と協議しながら慎重に行い、置換弁のstuckには注意した。血腫除去術後の頭部CTで所見の増悪がないことを確認、呼吸器weaningを進め、術後1週間で抜管、NPPV装着とした。Potts shunt術後1ヶ月の時点で、左反回神経麻痺は改善傾向にあり、経口摂取のリハビリを開始、NPPVも離脱できた。POD32でICU退室となった。 発表させて頂くPotts shunt症例は、当院においても数少ない経験であり、周術期管理の考え方や方針、臨床経過を共有させて頂くことしか出来ないかも知れない。ただ、肺移植ドナーの少ないわが国において、何とか救命させたいと願う医療者や患者にとって、今後の治療選択肢になっていく可能性はある。