The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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会長要望セッション

会長要望セッション2(I-YB02)
多剤併用療法抵抗性の重症肺高血圧に対するReversed Potts shuntの将来性

Thu. Jul 21, 2022 10:20 AM - 11:50 AM 第4会場 (中ホールA)

座長:坂本 喜三郎(静岡県立こども病院)
座長:土井 庄三郎(国立病院機構災害医療センター)

[I-YB02-05] Reversed Potts shunt実施に向けた肺移植との比較

小垣 滋豊 (大阪急性期・総合医療センター 小児科新生児科)

Keywords:肺高血圧, Potts shunt, 肺移植

肺高血圧治療薬の進歩と多剤併用療法により、小児の特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(IPAH/HPAH)の生存率は確かに向上した。しかし中長期的には薬物治療抵抗性の重症肺高血圧から高度の右心不全に陥り死の転帰をたどる例は少なくない。小児IPAH/HPAHの治療アルゴリズムでは、その最終的な治療戦略として、非薬物療法である心房中隔裂開術またはReversed Potts shunt術と肺移植とが掲げられている。Reversed Potts shunt術は、2004年にフランスのグループにより導入された外科的姑息術であり(N Engl J Med 2004; 350: 623)、右室の後負荷を直接軽減でき、心房中隔裂開術と異なり上半身の動脈血酸素飽和度を保つことができる治療戦略である。同グループは2015年に24例の治療成績を報告し(Eur J Cardiothorac Surg 2015; 47: e105-110)、その他にも小規模な研究ではあるが複数の施設からReversed Potts shunt術の有効性と術後成績、肺移植との比較に関する報告がなされている。2021年、欧米13施設からなる国際登録データベースを用いた重症肺高血圧症に対するReversed Potts shunt術110例の後方視的解析結果が報告された(J Am Coll Cardiol 2021; 78: 468-477)。早期死亡は17例(15%)、1年および5年の死亡または肺移植の回避率は、全体で77%、58%、生存退院できた症例では各々92%、68%であり、肺移植の術後成績と遜色ない結果である。肺移植は重症肺高血圧症に対する最終的な選択肢ではあるが、ドナー不足と長期待機期間、移植後合併症と生存率に残された課題はいまだに大きい。日本において、多剤併用療法に抵抗性の重症肺高血圧症に苦しむ小児例に、肺移植までの橋渡しあるいは移植を希望しない場合の介入としてReversed Potts shunt術をいかに安全に実施していけるか考えたい。