[II-JCCJS-02] Fontan患者における運動の意味
Keywords:フォンタン循環, 心臓リハビリテーション, 運動
フォンタン患者の運動管理方針は悩ましい問題である。運動によって、運動耐容能向上などの心臓リハビリ効果が期待できる一方で、静脈圧上昇に伴う臓器障害や、高強度運動による心臓突然死が懸念される。実臨床では、一定程度の運動制限を設けることが多いが、エビデンスは不足している。運動習慣のメリットとしては、運動耐容能の向上があげられる。筆者らの過去の報告でも、フォンタン患者中高生の運動部活動参加者は非参加者に比べて安静時一回換気量が大きく、また運動時の最大酸素摂取量も高かった(2017年の本学会会長賞演題として報告)。成人循環器領域では、運動リハビリ介入は運動耐容能を改善させるのみならず、生命予後改善にも有用であることが知られている。フォンタン術後患者に運動習慣を持たせることでも、同様の効果が期待できるのではないかと考えられる。その一方で、運動時の静脈圧上昇が健常者よりも顕著であり、最大運動負荷時に10-20mmHgの静脈圧上昇が起こることはこれまでも報告されている。これに関連して臓器障害、特にフォンタン関連肝障害が起こりやすいか否かについてのまとまった報告はないが、リハビリ介入、あるいは中高生の運動部活動の許容にあたっては、有酸素運動閾値レベルなど、一定の指標を設けることが妥当かもしれない。また中高生の部活動参加に関連して、実臨床では、吹奏楽器演奏に関する相談を受けることも多い。フォンタン循環が呼吸筋に駆動されることを考慮すると、呼吸筋を鍛えることは有益と思われるが、胸腔内圧上昇がフォンタン静脈圧にどのような影響を与えるかの知見はない。本報告では、フォンタン患者と運動の問題について、自験例の静脈圧測定下の心肺運動負荷試験および楽器演奏試験の結果を交えて報告し、その有用性と問題点について検討したい。