The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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レジェンドレクチャー

レジェンドレクチャー(II-LL)

Fri. Jul 22, 2022 11:00 AM - 11:50 AM 第1会場 (特別会議室)

座長:土井 庄三郎(国立病院機構 災害医療センター)

[II-LL-01] 不整脈の解明を目指して

平岡 昌和 (東京医科歯科大学 難治疾患研究所 循環器病部門)

Keywords:異常自動能, イオン電流, 遺伝性不整脈

心臓の規則正しい心拍は、洞結節のペースメーカー細胞に発生した信号が心臓内の異なる組織の細胞間を素早く、かつ有機的に伝わって完成する(興奮伝搬)。この規則正しい興奮伝搬は各細胞に生じる活動電位が担っている。心筋細胞の活動電位は、素早い立ち上がりの脱分極相と緩やかに経過する再分極相からなり、各組織間でややその様相が異なる。不整脈は興奮伝搬の破綻や洞結節以外から発生する異常自発興奮によりもたらされる。1940年代後半に導入されたガラス微小電極法は活動電位の変化やその伝搬の検出を可能とした。活動電位は細胞膜を介してイオンの移動がもたらすことが神経で証明されると、心筋でのイオン電流の測定がプルキニエ線維での電圧固定法で可能となった。本法により心筋の活動電位はNa電流による早い脱分極相と一部の細胞ではCa電流が関与し、緩やかに経過する再分極相には2種類のCa電流、数種類のK電流等で形成される複雑な機構によることが明らかとなったが、その詳細の解析は不十分であった。1980年代に導入された酵素で単離された1個の心筋細胞を用いたPatch Clamp(パッチクランプ)法は正確な膜イオン電流の解析と微細なチャネル電流の測定を可能とした。この3種の方法を駆使して、臨床の場で感じた不整脈発生の疑問点や治療法を異常自動能のイオン機序、不整脈発生の誘発や抑制をもたらす薬物・イオンやホルモン、などの機序解明を目指した研究成績の一端を紹介する。さらに、電気生理学的方法に分子生物学的手法を加味して明らかとなった遺伝性不整脈、特にQT延長症候群やBrugada症候群の成因に関する自身が関与した初期の研究成果についても触れる。