[II-OR13-02] 拒絶に伴う移植心冠動脈病変の急性増悪により突然死を来した一例
Keywords:心移植, 拒絶, 移植心冠動脈病変
【はじめに】心移植後の心冠動脈病変(CAV)は慢性拒絶と考えらており、遠隔期の予後に大きく影響する。限局した冠動脈狭窄が進行した場合は、経皮的冠動脈形成術や冠動脈バイパス術による治療が考慮されるが、多発びまん性に進展するため突然死の原因でもあり、最終的には再移植を余儀なくされる場合がある。【症例】13歳男児、2歳時に拘束型心筋症に対して心臓移植術を施行。タクロリムス(FK)とエベロリムス(EVL)で免疫抑制管理。移植後3年に薬剤性腎障害を認めFKを減量しミコフェノール酸モフェチル(MMF)を導入。しかしEVLによる間質性肺炎を合併し、以降FK+MMFで管理。移植後9年に腎臓移植を行ったが移植後BKウィルス感染により腎機能が再増悪し維持透析を併用。移植後10年でCAVを発症しDrug Coated Balloonによるカテーテル治療にて狭窄を解除し、術後10ヶ月時点では再狭窄がない事を確認した。移植後11年COVID 19流行に伴い、近医での免疫抑制管理を家族が希望したため受診は6ヶ月毎となり、定期的拒絶判定の心臓カテーテルも延期していた。CAV発症から1年4ヶ月経過後、自宅でCPAとなり近医3次病院に搬送、蘇生処置を行うも永眠。病理解剖にて冠動脈に心外膜から心筋内までCAVによるびまん性高度狭窄を認め、acute cellular reaction: Grade 2Rとantibody mediated rejection: pAMR 2以上が混在する拒絶反応を認めた。【考察】心臓移植後遠隔期に心機能や免疫抑制剤管理が安定していれば、外来や検査の間隔を持たせる事はQOL改善が得られる。一方、COVID 19流行による受診控えも多く存在する。本症例は多岐にわたる移植後合併症と共に治療を有したCAV発症の病歴からハイリスクと考えられ、より綿密なフォローの継続を考慮すべきであった。日本においても小児移植後遠隔期死亡を経験することは今後も増えることが予想され、移植後管理の新たな時代に入っていると考えられる。