[II-OR14-05] 先天性心疾患患者の幼児期から成人期に至る発達プロセス:複線径路等至性モデルを用いて
Keywords:成人先天性心疾患, 発達, 複線径路等至性モデリング
【背景】先天性の病気を有する患者は、自らの病気をどう捉え、社会の中でどのような経験を得て成人期に達するのだろうか。患者の発達プロセスを示すことは、医療関係者に患者の発達に応じた支援の視点を提供することのみならず、患者自身も自分と社会とのあり方を客観的に捉えるきっかけとなろう。【目的】本研究では、患者の成人期に達するまでの発達プロセスを社会的文脈との関係から明らかにすることを目的とする。【方法】30歳代の先天性心疾患患者1名に、3回の半構造化面接を実施した。分析は人間発達や人生径路を時間経過のなかで捉える「複線径路等至性モデリング(TEM)」を用いて図式化し、発達のプロセスを可視化した。【結果・考察】等至点を「30歳代になる」こととし、それまでの発達プロセスとして、幼児期、児童期に「病気に気づき」、学校で体育に参加できないことから「皆と違うと実感」していた。青年前期では周囲を意識して、普通にしていたい、周囲と同じでいたいと「葛藤」し、その葛藤を経ることで、青年後期では自分のできることを見つけるとともに、「周囲には色々な人がいる」と自分だけが特別なのではないと価値観の転換が行われていた。価値観の変換を経て、「病気との付き合い方の程良さ得る」ことが示された。その後、社会参加を経た「視野の広がり」や体調の変化を通して、「病気と折り合い」をつけ、「割り切り」ながら、等至点では「病気とともにある自分らしい生き方」を見つけるプロセスが示された。またそれらに影響する背景として親の「あなたの病気なのだから自分でどうするのか考えなさい」という一貫した姿勢、友人を始めとした周囲の病気に対する理解が助勢となっていた。【結論】患者の発達プロセスは一般的な発達プロセスに沿って、乗り越えるべき発達課題が多いこと、また各課題に対して患者自身がその経験をどのように意味づけるのかが重要であることが示された。