[II-OR15-02] TCPC術前後での血行動態変化とバソプレシンの役割
キーワード:TCPC, AESCULON mini, バソプレシン
【目的】TCPC手術の人工心肺(CPB)離脱時に低血圧となる症例に対し、フォンタン循環を安定化させる目的で選択的にバソプレシンを使用している。そのような症例の病態把握とリスク因子を明らかにするため術中の血行動態の変化を観察した。【方法と対象】2021年3月から6月までのTCPC手術連続22例を対象とした。執刀前および退室時にAESCULON miniによる心拍出量測定を行い、血圧とCVPを代入し体血管抵抗(RsI)を計算した。【結果】TCPC時年齢は3.0±1.0歳、体重は11.5±1.8kg。原疾患はHLHS 5例、無脾症4例、PAIVS 4例、Ebstein病3例、その他6例であった。全症例の検討ではTCPC術前後で平均血圧に差はなく(57±7 vs 58±8mmHg , p=0.32)、心係数(CI)は有意に低下し(2.77±0.52 vs 2.30±0.44 L/min/m2, p<0.001)、体血管抵抗(RsI)は有意に上昇した(19.1±5.4 vs 21.7±5.3 wood単位・m2, p=0.03)。CPB離脱時の低血圧に対し10例でバソプレシン(0.37±0.17 mU/kg/min)を使用した。バソプレシン使用症例(V群)と非使用症例(C群)で比較すると手術前後ともに両群のCIに差は認めなかったが、執刀前 (54±5 vs 60±8 mmHg , p=0.03)、および退室時の平均血圧(54±6 vs 62±8 mmHg , p=0.01)はV群で有意に低かった。両群でRsIは上昇していたが、退室時RsIはV群で低い傾向にあった(18.6±2.9 vs 24.4±5.5 wood単位・m2, p=0.004)。退室時のCVPに差は認めなかった。(12±2 vs 11±2 mmHg, p=0.27)。V群はPA indexが200mm2/m2以下の症例が有意に多かった(OR, 11.0; 95%CI, 1.0-120.4) (p=0.02)。【結語】TCPC前後で心拍出量は有意に低下していた。V群には肺血管床が乏しい症例が多く、執刀前および退室時の平均血圧、退室時のRsIは低い傾向にあったが、両群でCVPに差を認めなかった。RsIを適切に上昇させられない症例に対しバソプレシンを使用することでCVPを上昇させることなく血圧を維持しFontan循環を安定化させることができた。