[II-OR15-04] 手術後難治性乳糜胸水に対する治療戦略 -Chylothorax that has a beginning has an ending-
Keywords:難治性乳糜胸水, リンパ管静脈吻合, 上大静脈閉塞
【背景】術後乳糜胸水は入院期間を著しく延長させるだけでなく、難治性となれば生命予後に影響する.【目的】術後乳糜胸水の難治性化リスク、根拠に基づく治療戦略を後方視的に検討.【対象】2011 - 2021年に当院で行った心疾患外科手術後に乳糜胸水を発症した26例.月齢 (中央値, range) : 3, 0.2 - 48.体重 (kg) : 4, 1.7 - 18.5.1歳未満の乳児例24例(92%).【結果】<難治性リスク>リンパ産生減少治療(禁飲食、オクトレオチド)無効を重症化の定義とした.難治例は12例(46%).ロジスティック回帰による多変量解析では、上大静脈、無名静脈に閉塞もしくは重度の狭窄を合併した例に重症化リスクが有意に高かった(P<0.001).疾患名、術式、体格に有意差を認めなかったが、死亡した3例はすべて上大静脈閉塞を合併した新生児手術例(体重1.7 - 2.7kg).<難治性乳糜胸水に対する治療>上大静脈、無名静脈閉塞に対しステント留置を行った4例中1例で乳糜胸水寛解(上大静脈、無名静脈残存狭窄なし)、1例で一時的寛解(上大静脈狭窄なし、無名静脈閉塞).両方向グレン手術後体肺動脈側副血行路に対するコイル塞栓を行った1例で寛解.リンパ管静脈吻合(LVA)を行った6例中4例で寛解.胸膜癒着療法3例中1例で寛解.胸管結紮2例はいずれも無効.【考察】・難治性乳糜胸水発症トリガーは術後中心静脈圧の上昇や留置カテーテルによる上大静脈、無名静脈、静脈角の狭窄、閉塞.・先天性リンパ還流異常(胸管低形成など)の有無は治療方針を決定する上で重要であり、リンパ管シンチは診断の助けになる.・LVAは低侵襲かつ有効な治療と考えられが、無効例も存在.・先天性リンパ還流異常を合併しない例に対してはリンパ管塞栓術が選択肢の1つとなる.【結語】難治性乳糜胸水を病因から考察することで、適切な治療に到達できる可能性が高まりつつある.