[II-OR15-05] 難治性乳び胸水に対する新たな内科的治療~SGLT-2阻害薬と利尿薬内服タイミング療法の有効性
キーワード:SGLT-2阻害薬, 利尿薬, 乳び胸
【緒言】難治性乳び胸水の初期治療として脂肪制限や中鎖脂肪酸ミルク使用、オクトレオチド投与が行われ、初期治療不応例では病態に応じ外科的/経カテーテル的リンパ管閉鎖、胸腹腔シャント、リンパ静脈吻合等が選択される。限定的内科治療の中、SGLT-2阻害薬投与と利尿薬内服時間調整が有効であった症例を経験した。【症例】4歳男。在胎40週、3912g出生。Taussig-Bing奇形に対して肺動脈絞扼術を経て1歳時に心内修復術(大血管スイッチ)を実施したが、予期せぬ僧帽弁狭窄のため9日間の体外循環を経て僧房弁置換となった。その際、上大静脈(SVC)長期カニュレーションのためSVC症候群(無名静脈閉塞を含む)となり、カテーテル治療により無名静脈の再疎通・ステント留置、SVCバルーン拡大術を行った。しかし胸管静脈角合流部閉塞に続発すると考えられる難治性乳び胸水を併発し静脈路への追加カテーテル治療と高容量利尿薬投与(フロセミド、スピロノラクトン、トルバプタン、トリクロルメチアジド)を行ったが改善に乏しく入退院を繰り返した(直近1年計7回:77日)。3歳10か月時心臓カテーテル検査は心係数4.7L/分/m2、肺動脈圧87/35(48)mmHg、肺血管抵抗係数7.1WU・m2と肺高血圧合併があった。ダパグリフロジン10mg内服を開始したところ尿量増加と胸水減少がみられ、更に利尿薬内服時間を食間に変更したところ体重コントロールが可能となり退院可能となった。以後2か月間再入院はなかった。【結語】SGLT-2阻害薬は利尿効果が主とされるがその薬理効果は不明な点も多く乳び胸水に対する治療薬としても期待される。また低心拍出病態において食後を回避し腎血流最大時の食間へ変更すると利尿効果を最大に発揮できる。